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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十三話 鉄の意志
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る、私だけじゃない、皆判っているだろう、聞きたくない。
「殺してください」
「しかし、それは」
「我々の任務は、皇位継承の有資格者をテロより守ることです。我々が守るのは皇帝陛下の御血筋の方のみ。ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯は両家の当主であって陛下の御血筋の方ではない。ためらう必要は有りません」

少将の言動には寸分の揺るぎも無い。少将を敵に回したくない。ここまで冷徹な人を敵に回して生き残れる人が居るのだろうか?
「どうしても出来ないというのであれば、ここに連れてきてください。小官がヴァルハラへ送って差し上げます」
「!」

鉄の意志だ。この少年の怖さは二つある。一つは並外れた智謀、もう一つはこの鉄の意志。この二つがエーリッヒ・ヴァレンシュタインを形作っている。軍務尚書が彼を選んだのは間違っていない。彼以外にこの危機を打開できる人間が居るとは思えない。

「このオーディンで内乱が起きれば死者は何千、何万という数になるでしょう。そして必ず内乱は帝国全土に広まる。そうなれば被害がどれほどになるのか…、想像もつきません。我々はそれを防がねばならないのです。そのためなら野心に狂った愚か者などなんのためらいもなく殺せます」
「!」

「小官は大将閣下の指示に従います。装甲擲弾兵第二十一師団への御命令をいただきたい」
リューネブルク少将だ。周囲の視線がリューネブルク少将に集中する。しかしリューネブルク少将は微動だにせず、ヴァレンシュタイン少将を見ている。

「装甲擲弾兵第二十一師団は東苑と南苑の間に部隊を展開してください」
「宮中の警備ですか?」
「いえ、そちらは宮中警備隊にお願いする予定です。第二十一師団は戦略予備とします。万一、暴発した貴族が出た場合にはためらうことなく殲滅してください」

「承知した」
殲滅、リューネブルク少将はその言葉にもまったく動じる事はなかった。むしろ周囲のほうが慌てている。皆決断を迫られているのだ。

「憲兵隊はブラウンシュバイク、リッテンハイム両家を護衛すればよろしいのですね」
声を上げたのはまだ若い士官だった。
「キスリング中佐、控えろ」
「勝手に発言するな」
キスリング中佐というのが彼の名前らしい。中佐の発言を周囲が咎めている。

「では、内乱が起こるのを黙って見ていますか?」
「そんな事はいっておらん」
「憲兵隊に選択肢は二つしかありません。内乱が起こるのを黙って見ているか、それとも防ぐために尽力するかです。小官としては、大将閣下の指示に従い内乱を防ぐべきだと考えています」
「……」

「サイオキシン麻薬の一件で大将閣下の力量は我ら憲兵隊が一番知るところではありませんか。ためらう必要はないでしょう」
周囲がしぶしぶうなずく。わかっているのだ、少将に従うし
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