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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十三話 鉄の意志
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の任に有る間、小官の階級は大将となります。お含み置きください」
さすがにだれも口を開く人間はいない。お互いにしきりに眼を見交わす。一部の人間は少将をじっと見ている。皆何かが起こったことを理解したのだ。ただ、何が起きたのかが判らないでいる。
「我々をここへ集めた理由をお教えいただきたい」
発言したのはリューネブルク少将だった。
「先程言ったとおりです。帝都の治安と安全を守るためです」
「?」
「皇帝陛下がお倒れになりました」
「!」
皆の視線が少将に集中する。
「御容態は芳しくありません」
「…」
「知っての通り、陛下は後継者を定めておりません」
何人かがうなづく。
「このオーディンで内乱が起こる可能性があります」
また視線が少将に集中する。そばに居る私でさえ痛いと感じるほどだ。自分たちが何故呼ばれたのか理解したのだろう。
「我々の仕事は内乱を防ぎ、帝都の安全を守る事です」
「……」
「既にリヒテンラーデ侯より通達が出ています。ゴールデンバウム朝に敵意を持つものありと。これは建前です。この建前を利用して内乱を防ぎます」
「それはどういう事ですか」
憲兵隊だろう。中年の士官が質問してきた。
「皇位継承の有資格者をテロより守る。それを名目にブラウンシュバイク、リッテンハイム両家を護衛します」
「護衛?」
中年の士官は訝しげに言って周囲を見渡す。
「憲兵隊で両家を取り囲み、いかなる意味でも人の出入りを禁じます」
「!」
「それは、監禁では」
「その通りです。ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯を他の貴族から隔離することでお二方が暴発するのを防ぎます」
「しかし、貴族たちが面会を求めるでしょう。どうします」
「殺してください」
「!」
皆息を呑む。貴族を殺す!何を言ってるか判ってるの。
「皇位継承の有資格者を危険にさらす事は出来ません。貴族たちの中にテロリストの同調者が居ないとは限らないのです。テロリストの同調者として殺してください」
少将はあくまで冷静に殺す事を要求している。そして殺すだけの大義名分は用意されているのだ。周囲は皆完全に少将に気圧されている。一見すると女性にも見える少将が冷徹に殺人を要求している。
誰かが唾を飲んだのだろう。ゴクリという音が部屋に響く。ビロードに包まれた鋼鉄の手、私の頭の中にそんなイメージが浮かぶ。そして少将は今ビロードを脱ぎ捨てようとしている。鋼鉄の爪を振るうために。
「しかし、殺すのはいくらなんでも」
「中途半端に逮捕などすればかえって厄介です。相手に付け込む余地を与えるだけでしょう。殺してください」
「ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯が面会を望んだら?」
怯えているような声の問いだった。答えはわかってい
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