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第一章
通り雨
帰り道の楽しいデート、その筈だった。
ところが急にだ。雨が降って来た。
それを受けてだ。二人はだ。慌てて雨宿りの先を探した。
「何処かある?」
「ええと、ここは」
「ないよね」
「困ったわね」
こうだ。二人で言い合いながらだ。雨宿りの先を探す。
それで何とかだ。その場所を見つけたのだった。
「ここ、いいんじゃない?」
「ここ?」
「そう、ここ」
女の子の方が男の子に言う。
「ここね」
「そういえばいいかな」
その男の子は背が高くすらりとしている。そして眉が太い。爽やかな顔立ちであり黒髪を綺麗にあげている。その彼が応えるのだった。彼は黒い詰襟だ。
「ここで」
「そうでしょ。いいでしょ」
女の子も応える。見ればだ。
彼女は黒いセーラーだ。リボンだけ紅だ。黒髪をボブにしていて楚々とした顔をしている。胸はあまりないがだ。綺麗な顔つきに相応しい身体つきをしている。
その彼女がだ。こう彼に言うのだった。
「俊彦君もそう思うでしょ」
「うん、いいね」
その俊彦と言われた彼が女の子に頷く。
「ここでいいと思うよ」
「それじゃあここにね」
「うん。それにしても」
今度はだ。男の子から女の子に言った。
「理恵ちゃんもよく見つけたね、こんな場所」
「たまたまよ」
こうだ。理恵は言うのだった。
「たまたまよ。本当にね」
「そうなんだ。たまたまなんだ」
「とにかくよ」
たまたまでもだとだ。大島理恵は坪本俊彦に話した。
「今は雨宿りをしないと」
「そうだね。それじゃあ」
「このまま雨に濡れても風邪をひくだけだし」
理恵の言うことはまさに正論だった。
「だから」
「流石に僕も風邪をひくのはね」
「嫌よね」
「進んで風邪をひきたい人もいないよ」
俊彦は言った。
「何かの事情で学校を休みたい人以外にね」
「そうよ。じゃあね」
「うん、じゃあ」
こうしてだった。俊彦と理恵はだ。
急いでそこに、たまたまそこにあった廃屋に向かった。そこの物陰に入って何とか一休みだった。そうなる筈であった。少なくとも二人はそう思った。
しかしだった。物陰に入ってすぐにだった。その廃屋の中からだ。
何か声が聞こえた。その声を聞いてだ。
理恵はだ。眉を曇らせて俊彦に尋ねた。
「何か聞こえない?」
「あっ、そういえば」
「聞こえるわよね」
「これ何の声かな」
「声よね」
理恵は言った。
「これって声よね」
「そうだね。声だよね」
「何なのかしら」
理恵はその廃屋の中から聞こえてくる声、小さくて何を言っているのかわからない声を聞きながらだ。首を傾げさせながら俊彦に尋ねた。
「これって
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