第五十四話 所詮は帽子の羽飾り
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
るだろう。さっさと話せよ。お前だって俺が貴族に良い感情を持っていないのは知っているだろう。ぐずぐずしていると更迭するぞ。
「その、陛下は……、ゴールデンバウムの血を引いていないのです」
「……」
はあ? 何だ、それは。血を引いていない? ヴァレリーとヒルダは目が点だ。俺も似た様なもんだろう。逆に男爵は話して気が楽になったのか落ち着きを取り戻した。
「先日、宰相閣下からの御命令で陛下の血液、遺伝子を御調べしました」
そう、調べさせた。男爵は不敬罪になるとか言って嫌がったが無理やりやらせた。名目は未だ幼い皇帝に病気が無い事を確認する事。万一病気が有れば次の皇帝を早急に選定する必要が有る。そういう事だった。本音は違う、エルウィン・ヨーゼフ二世は血液に異常が有る可能性が有った。それを確認する事。遺伝子を妄信したルドルフの末裔が遺伝子に異常を持つ。廃位の十分な理由になるだろう、そう思ったんだが……。
「血液、遺伝子に異常は有りませんでした。その際先帝陛下、皇太子殿下との遺伝子とも比較したのですが……。親子関係、親族関係は認められなかったのです」
「……なるほど」
まさに銀河帝国版宮中某重大事件だ。この男が人払いを願った筈だよ。無視したのは失敗だったかな。
「如何しますか?」
如何しますか? ベルンハイム君、君は何も分かっていないのだな。見事な武勲だよ、これは。これで俺があの幼児を廃しても誰も文句を言えなくなったんだから。帝国臣民も納得するだろう。ベルンハイム君、喜びたまえ。俺が皇帝になっても君は宮内尚書だ。野心家ならこれを取引材料にする筈だ。君はそれをしなかった。偉いぞ、褒めてやる。頭を撫でてやりたいくらいだ。
「報告書を提出して下さい。科学的根拠を示すデータも含めてです」
「はっ、分かりました。……その、陛下の本当の父親については……」
「捜す必要は無いでしょう。前の内乱で死んでいるかもしれませんしね。如何でも良い事です」
「……ですが、……では公表は……」
「いずれ時期を見て行います。それまでは他言無用です」
「はい」
不安そうな顔をしているな。
「安心してください。陛下には地位を退いてもらいます。一度は皇帝になられた方です。或る程度の年金を与えて経済面で苦労する事が無いようにします。幼児を虐待しているなどと言われるのは私としても本意ではありません」
安心したのだろう、ホッとした表情で男爵は帰って行った。心外だな。男爵は俺が残虐な男だとでも思っているらしい。俺は必要な事をしただけだ。残虐な事を楽しんでいるわけじゃない。
「閣下、あの、これは……」
ヒルダが困惑した声を出した。お嬢様だからな、托卵なんて考えた事は無いんだろう。
「エルウィン・ヨーゼフ二世の母親はルードヴィヒ皇太子以外の男性と性交
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ