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歌集「春雪花」
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 山里に

  春の香纏いし

   風吹きて

 花咲きにければ

    君に逢えじか



 この寂しい山里に、本格的な春が訪れ…暖かな風が桜の蕾を綻ばせたなら、彼に会えるだろうか…?

 今はまだ冬との境を彷徨う時節…彼に会いたいと思う反面、もう会わない方が賢明だと考える自分もいる…。

 だが…心は彼を求めて止まないのだ…。

 それもまた…人故か…。



 恋もなく

  いつかは消ゆる

   この身ほど

 春夜の夢と

    何ぞ変わらじ



 叶う恋なぞありもしないこの私は、この先…どう生きれば良いものか…。

 この躯は老いて行き…いつかは消え去るものだ…。
 どれだけ想いが強かろうとも、どれだけ生き永らえようとも…まるで春の浅い眠りに見る儚い夢と同じ…。

 この身を恨めしく思わぬ日はない…彼を恋しく想わぬ日がないように…。




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