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【短編集】現実だってファンタジー
既死廻生のクレデンダ 後編
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の世界では「V2004y担当第3373号男性型」という名前も「1000号」という名前も、平均的な名前として相応しくない。当機は機械であるが、同時に知性体である。現在の呼称番号は相応しくない。


「つまり、俺がそのニックネームとペットネームを考えるべきだと?」


 ――どちらも他の個体が対象固体に名前を付けるのが習わしである。当機はニックネームをそちらにつける。そちらは当機にペットネームをつけることを提案する。


 1000号のペットネーム。こちらもインターネットを介在してペットの意味を調べるが、愛玩動物なる聞いた事のない文化を発見して余計に混乱する。地球に生物種として認められた動物は人間のみであり、他は全部絶滅した古代生物である。遺伝情報を利用して大型生物兵器を作る実験もあったが、コストがかさむとして計画そのものが却下された。
 ただ、ペットとは通常あまり複雑な名前を付けないそうだ。


「お前のペット−ネームは(せん)だ」


 ――却下する。


「却下だと?何か問題があったか……ならばポチだ」


 ――論外である。


「……おかしいな。ペットの名前の付け方として方向性は合っている筈だが……よし1000号はこの世界の英語という言語ではmillionと書くらしい。ここからとってミルとはどうだ」


 ――もう少し。


「も、もう少し?意味が分からん。ええと、ではiを足してミリィ?……発音方法がいまいち分からん」


 ――ミリィをペットネームとして認める。


「そ、そうか」


 よく分からないが、1000号改めミリィの人工知能が今までのロジックと思考を変えたらしい。
 ミリィは機械知性体だ。当然学習もするし、学習に応じてロジックパターンも変化する。
 これもインター・ネットの影響か、それとも俺の脳から物理的に切り離されたことでそれまでと違ったパーソナリティを構築しつつあるのだろうか。
 考えていると、ミリィから応答。


 ――こちらも、そちらのニックネームを決定した。


「そうなのか。聞かせてくれ」


 ――日本語という言語を参考にした。「太陽」の陽と、空の青さの元になる太陽の「明かり」から取って、「陽明(ようめい)」にした。


 陽明。よくは分からないが、ミランダ的な名前だ。だが、陽明の方が今までの名前より圧倒的に短い。やはりクレデンダの文化は部分的に破綻していたようだ。その名前を拒否する理由はなかった。


「では、俺は今日から陽明だ。よろしく、ミリィ」


 ――よろしく、陽明。


 これからどうするか。それを決める前に――もう少し空を眺めていよう。

 青空は美しい。

 全身にやさしい
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