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【短編集】現実だってファンタジー
既死廻生のクレデンダ 後編
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 袋には文字のようなものが印刷されているが、こちらと異なる言語体系なのかまったく読めなかった。恐らくこの文明圏では言葉も通じないだろう。
 クレデンダは基本的に高速言語(ハイワード)と呼ばれる独自の効率的言語を使用している。ミランダと同系列の言語がベースであるこの高速言語は、少なくて速い発音で可能な限り相手に多くの情報を伝達することを主としており、そのために極限までワードが簡略化されている。ミランダでも余程聞き慣れた存在でなければ翻訳機なしに読解することは難しいのだから、この文化体系の人間に通用する道理がなかった。

 改めて建物内を見渡す。壁は非常に簡素で質の悪い原始的なコンクリート。
 中には申し訳程度に強度補強の鉄筋が詰っており、複合加工板に比べて非常に脆い。
 壁にぶら下がるポリエステル製の布は、恐らくカーテンと呼ばれる光の遮断器だろう。
 奥にあるのは手動のドア。手動と電動の両方ではなく純粋な手動ドアなど骨董品の類だ。

 壁に設置された金属パイプと古代陶器は、どうにも小型水道設備のようだ。
 これも恐ろしく効率が悪いが、原理そのものはクレデンダのそれとほぼ変わらない。
 天井の光源に至っては、原始的すぎてこちらの知る文明に該当する技術が見当たらない。
 ただ、やはりエネルギー効率は悪そうだ。

 天井には網目状の炭化水素パーツがあり、その奥に通気機構らしいものがある。
 空気清浄化を目的とした環境維持装置かと思ったが、原始的な気温調節機能しかないようだ。
 目につくもの、近くにあるものが悉く地球のそれより古い。
 まるでミランダの擁する「博物館」――過去の文明形態を保存する施設にいる気分だ。

「相対的にはミランダ側に近い文明のようだが、ここまで古いとクレデンダ・ミランダという問題ではないな……一先ず、この世界の文化形態と言語形態は後にするとして――ここはどこだ?」

 何かの施設内である可能性が高いが、OTがないことには電子的・量子的な情報収集は望めない。
 最低でもある程度正常な空気がある以上、相応の環境維持装置がある空間なのだろう。そう思い、酸素供給板に近づく。

 ……酸素供給板ではなく、どうやらスライドシャッターの類だったらしい。ナノマシン・セルによる自己修復機能もなく変性強化プラスティックも使ってない、脆いガラスがアルミ製枠に嵌められているだけの板だ。四隅から空気が漏れているのでてっきり酸素供給板だと思い込んでいたが、単純に密閉性が緩すぎるだけだったようだ。
 地球では考えられない。ガスでも放り込まれたらどうするつもりだろう、と思いながら手動のレバーを回すと、シャッターが横にスライドして部屋の中に風が吹きこんできた。
 
 咄嗟に呼吸を止めつつ大気を分析。少々塵が混じっているが、健
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