既死廻生のクレデンダ 後編
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いなどというのは、約束違いじゃないか。
「命令を………約束を、無視したのか?答えてくれよ………俺を捨てないでくれ………」
きぃん、と小さな音がした。
これは、体内ではない。これはOTから、高次元からの干渉。
その意味をゆっくりと咀嚼し、認識し、そしてもう一度確認した。
「……………いるんだな、1000号」
クレデンダとして、一度確認を取れたことをもう一度問うのは無駄な行為だ。それでも、問うた。
再び、きぃん、と骨伝導で音が響く。
――そうか。
「いるんだな……いるんだな!!いるならいい!いるなら、いいんだ………ッ」
横隔膜が不自然な動きをし、瞳から溢れる洗浄体液が増加し、口から嗚咽が混じる。
1000号は、いたのだ。転送先に自分の『入れ物』が無い場合を想定して、自分のデータを高次元に存在するOTに転送し、OTを量子化してデータ送信を行う事でこちらを追ってきていたのだ。高次元に存在を固着されたOTは、半ば実体を持たない存在だ。実体がないなら、データだけを送り込んでもOTは機能を果たすだろう。
頭の中にいないから、膜電位に反応はなかった。返答が奇妙な音しかないのも、OTがコクーンを展開しているせい。いずれ修復が完了したら、動き出すだろう。
1000号は、ここにいる。
『俺』は、この文化圏で感泣と呼ばれる行為を、ただひたすらに繰り返した。
= =
暫く1000号の協力が得られない以上、自力で情報を収集するしかない。
取り敢えず立ち上がる。バランスが取れずふらついた。信じられないほど、筋力が足りない。
一体どのような生活を送ればこれほど身体機能が低下するのか見当もつかなかった。
「そういえば、これは俺の肉体ではないんだったか……?」
改めて考えると、これは記憶の転送先にいた『誰か』の身体なのだ。
生身でありながら機能的であるクレデンダの肉体とは違う。
今更になって、自分が自分の肉体からは離れたことを初めて自覚する。
年齢は、ミランダ基準ではおおよそ13歳程度だろうか。クレデンダでは必要に応じて成長速度を速める処置が下されるために年齢より耐用年数の方が重要になる。
クレデンダの肉体は全て遺伝レベルで調整され、人工子宮の中で生を受け、誕生から6年間の間、幼児育成機関でクレデンダとしての生活に必要な身体能力と知識を植え付けられる。遺伝子異常による不適合者は基本的に蛋白源として処理され、個性による「むら」を排除するために形成される顔などはあらかじめ決められている。網膜には識別番号とコードが刻まれており、全身は常にナノマシンによって管理される。
体温、痛覚、汗腺、脳内麻薬など体内で生
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