既死廻生のクレデンダ 前編
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だが、1000号は揺らがない。
『当該AIはコミュニケート対象の為に存在するため、この場合当該AIがどうなるかは計算の範疇を越える。プログラム起動準備開始……』
「………俺を、置いていく気か」
『置いていかれるのは当該AIである。プログラム起動準備完了』
自我が目覚めたときからずっと1000号とは一緒だった。置いて行ける筈がない。
論理的な根拠もなく『彼』は思う。二人一緒でないと意味がない、と。
半身とか、体の一部という簡単な言葉で表すこともはばかられる、唯一無二の存在。それと離れ離れにされることを想像すると、足場が崩れ去るような暗く冷たい感覚を覚える。この感情の正体を1000号に教えてほしい。でも、時間がない。1000号は来てくれない。
いや。
1000号は『分からない』と言った筈だ。ならば、『分からない』。
理論上は不可能ではないのだ。なら、可能性はある筈だ。
不確定的な技術ならば、成功確率も失敗確率も等しくなる。確率を算出するためのデータそのものが存在しない以上、シュレディンガーの猫のように成功と失敗は表裏一体の筈だ。
「一緒に跳ぶぞ。一緒に、空を見るんだ」
『彼』は、初めて1000号に命令した。命令権限は持っているが、行使したのはこれが初めてだった。
感情的な存在であるミランダがそうするように、クレデンダの『彼』は願うように命令した。
『……時間がない。5秒後に転送を開始する』
1000号は何も言わず、プログラムを走らせた。1000号は機械知性体だ。機械の理で思考し、目的の為に動き続ける。
本来なら1000号のようにインプラントされた機械知性体は統合管制システムを第一、パートナーたるコミュニケ―ト対象を第二に行動する。その1000号が、今は『彼』の命令確認を取らずに動いていた。その行動をとらせる感情は焦りだ。1000号が焦っていて、返答を後回しにしているんだと直感した。
そうまでして、『彼』を『どこか』へ送り出したいというのか。
空を確かめるより、それが重要だとでも言うかのように。
今、思う。1000号と一緒にいないのでは、自分でないのと同じことなのだ。
来い。
絶対に、来い。
「お前も来るんだ」
『3』
「でないと、意味がない」
『2』
「一緒に見よう。決定事項だ」
『1』
考えうる限りの精一杯の要求を突き付けた。
100号は、結局最後まで何も言わなかった。
『0』
「1000号、必ず共 に 空 を ――――――」
量子化された膨大な記憶が『どこか』へ転送され、意識が擦れていく。
『彼』を『彼』として構成する脳髄のデータが、量子データとして上位空間へと引きずり
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