既死廻生のクレデンダ 前編
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もいない。
ただ、遠くから断続的に聞こえる爆発音と噴煙が聞こえるだけ。
やがて、クレデンダの中枢であるセントラルベースが、地上の太陽とでも呼ぶべき超々高熱量広域破壊兵器によって爆炎に包まれる。防衛用のディストーションウォールは、もうその機能を果たしていなかったようだ。
「早かったな。1000号の計算で言う最長とはセントラルベースが無意味に攻撃に耐え続けた場合の仮定だろう?」
『その質問を肯定する。今、大気圏外で潜中魚雷のが宇宙軍の占拠した人工衛星を破壊するのを確認した。同時に、軌道エレベーターも自壊を始めたのを目視で確認できる』
遠くを見ると、大気圏外まで延々と続いている軌道エレベーターが、ゆっくりと曲がっていくのが見えた。実際には恐るべき速度で崩壊しているのだが、その規模があまりにも大きすぎて酷く緩慢な速度に錯覚させる。
軌道エレベーターの崩落が自身のように大地を揺るがし、巨大な土煙を噴き上げる。まるで地球そのものが割れているようだった。それが、最後だった。
血濡れの戦場に静寂が訪れる。
ただ、為すべきこともなく死という名の静謐を待つだけの時間が。
『彼』は、人類の迎えた余りにも愚かで無情な結末に何も感慨を覚えない。何故なら、彼は未来に何一つ託すものがないのだから。託す夢、遺伝子、文化、生きる意志そのもの。その全てが欠落していた。
そのように教育され、何も考えずに敵を排除するように生き、そして消耗品が捨てられるように死んでいく運命にあることを知っているのだから。
『彼』だけではない。この最終決戦場に立つクレデンダのほぼ全員が、そしてひょっとしたらミランダでさえそうなのかもしれない。互いにもう戦争の意味など無くなっていたのだ。言うならばそれはヨハネの黙示録に記された終末か、或いは歯止めのなくなった細胞のアトポーシスのように、只々無感情に皆は死へ向かっていった。
それが、人類の限界だったのだろう。
『彼』と1000号は、黄泉路への暇つぶしをするように、お喋りを続けた。
「1000号。なにか、喋ってくれないか。やることがなくて退屈だ」
『本部の壊滅によって制限情報のロックが消滅した。今ならばデータの閲覧が無制限に可能である。そして、その情報によると――大気が汚染される前、空には『蒼穹』と呼ばれる水色の空が広がっていたとある』
「水色……?水に色だって?そんな色が、この世界には存在したのか?今まで灰色と大地の茶色、あとは血の赤と肌色くらいしか見たことがないぞ」
『クレデンダは不要な文化を削り取る過程で、活動に必要のない色を余分として文化から排除した。その過程で水色を失ったと推測される。自然界に存在する水色は、生物種も含めてとうに消失しているようだ』
「それは、どんな色なんだ?クレデン
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