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く撫でてやった。
「はぁ…」
女が甘いため息をついた。
ほのかな光の中にある女の顔を、改めてじっくりと見る。
ややつりあがった目。その中の澄んだ空色の瞳が、潤んですこし涙ぐんでいる。
整った鼻筋、小さく、色気と潤みを帯びた唇。
細い顎、きゃしゃな首筋。
そして…流れるような白みがかった金髪と、そこからはみ出た、大きくとがった、耳。
エルフ。
森の妖精、不老不死の半神。
寿命のある人間どもを見下す、得体のしれない魔法使い。
エルフの森に人間が足を踏み入れたら、生きては帰れない。
そんな噂でしか知らなかったエルフが、ついさっきまで俺のペニスで快感を貪っていた。
「ん?…んっ」
じっとエルフの顔を見ていた俺を、不思議そうに見つめ返していたエルフが、もういちどキスしてきた。
「ん…んちゅっ」
互いの舌を軽く絡ませる、さっきより長めのキス。
エルフが舌を離す。俺はこいつに出会ってからの疑問を、素直に投げかけてみた。
「俺を殺すんじゃなかったのか」
「…お前を見たの、わたしだけ。みんな、見てない。お前、森に近づいてきただけ」
エルフが 人間の言葉でそう囁いた。
「俺を小屋に泊めて、朝に追い帰したら済む話だろうに、なんでこんな…」
俺も、できるだけ小さな声で囁く。
「子供…ほしい」
エルフが俯く。長い耳の先がほんのり赤くなった。
…。
狩りのため森に入っていた俺は、ウサギを追って、森の奥深くに入っていった。
気が付くと、来た道が分からなくなっていた。森の中に深入りしすぎたんだ。
俺は帰り道を探して、昼間から宵闇のように薄暗い森を、しばらくさまよい歩いた。
突然、ひゅっ!と空気をつんざく音がして、俺の頬を何かが掠めた。
「!?」
後ろを振り向く。
耳の長い金髪の少女が、弓をつがえていた。
怒りに満ちた、その表情。
エルフ?森の妖精!?
その時、エルフは弓の名手だというのを思い出した。
殺される! …逃げるか? いや無駄だ。
俺は一か八かで振り返り、エルフに向けて弓をつがえた。
俺だって、村一番の弓使いだ!
エルフと俺は、互いに殺意をみなぎらせながら弓矢を向け合う。
殺るか、殺られるか…。
殺意を帯びた緊張が、どれだけ続いたか分からない。
「…」
エルフが、緊張した表情を緩め、弓を下ろした。
「?」
エルフが弓と矢を地面に落とし、両手の手のひらを振ると、ゆっくりその手を下ろす。
(お前も弓を下ろせ…って事か)
俺も、弓を下ろした。
殺意の応酬が消えたとき、俺はふと、森の中を冷たい風が駆け抜けるのを感じた。
気が付くと、宵闇の森は、さらに暗くなっていた。もう夕暮れ時なのか。
エルフが、じろじろと俺の顔を見つめて、それから、ゆっくりと全身を品定めするように視線を上下
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