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しく撫でる。
「僕は医者だから分かるがこれは大した傷じゃない。水で洗って消毒して、綿で包んで包帯でも巻いてれば数日で塞がるさ」
「でも、でも!」
今にも大泣きになりそうだ。ちょっと落ち着かせよう。
シルヴィに軽くキスをしてから抱きかかえてベッドに連れていき、頭を撫で続ける。
「先生……」
「ここで休んでなさい。ちょっと治療してくる」
台所で指を洗おうと引き返そうとする僕の袖をシルヴィが掴む。
「どうした?」
「あ、あの、医学的には間違ってるかも知れません。先生に傷を負わせてしまったせめてもの償いを……」
「償い?」
その大げさな言葉に思わず鼻で笑いかけると、彼女は唐突に傷ついた指を咥えてきた。
「ん、ちゅ……。はぁ……れろっ……」
まるで奉仕するように指先を舐め始める。
血の垂れた指を丁寧に綺麗にしてから、傷口をそっと舌で撫でる。
医学的には説明がつかないが……彼女のその行為だけで自分の傷が癒され、塞がったような気になった。
「んふ……。ごめんなさい先生、私勝手なことしました」
「いいよ、ありがとうシルヴィ。君の反省の気持ちと償い、確かに受け取った」
「……ありがとうございます」
僕はシルヴィを押し倒して4Rまで行きたくなる気持ちをぐっと我慢して、抱きしめて頭を撫でるだけにとどめる。
包帯と綿とアルコールを手に取り台所に向かう……前に、もう一度振り返って彼女に話しかけた。
「……この指じゃ水仕事はちょっとやりたくない。落ち着いたら朝食の支度の続きをお願いしていいかな?」
「はい、先生! 今度は気を付けます」
「棚の調味料を取るときは?」
「いちど床に降り、箱を棚の下に移動させてから踏み台に登ろう! ですね!?」
「よし!」
にっこりとほほ笑む彼女に、僕も精一杯の微笑みを返して人差し指を向けた。
今日の行動目標: 踏み台の移動、ヨシ!
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