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ガールズ&パンツァー SSまとめ 西住みほと角谷杏(暴力シーンあり)
その1
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「別に……。短い間でしたが、お世話になりました」
「……っ!」

 パンッ!
 言葉より先に手が出た。怒りで我を忘れた私は……思い切りみほの頬に平手を叩き付けた。
「大洗女子学園の生徒会長、角谷杏をなめるな。お前がはいと言うまで、お前も友達も絶対帰さ……」
 頬を押さえていた西住の瞳が私を射すくめる。
 光を失った瞳が冷たく凍え……蒼ざめた顔の唇の端が小さく歪んでいる。
 全身から沸き立つどす黒い邪気を感じ取り、後ずさりしようとした瞬間……凄まじい質量が私の右頬を直撃した。
 車に、撥ねられたみたいな。
……壁際の本棚に叩き付けられ、雪崩落ちた本の山に埋ずもれた事に気付くまで、しばらく時間がかかった。
 脳が揺さぶられ、ひどい耳鳴りとめまいの後、割れるような頭の痛みが襲ってきた。
 顔の右半分の感覚が無い。口の中で血の味がする……私はみほに、殴られたんだ。
 本の山に埋もれ、ぼやけていた視界の中に、みほの顔が飛び込んでくる。
 また、唇の端が歪んでいた。
「……あ、ごぼっ」
 片腕で胸倉を掴まれて吊り上げられ、息ができなくなる。
 女の子の腕力じゃない。戦車道を、西住みほをなめていたのは……私だった。
「角谷杏会長。私は戦車道をやりたくないんです、分かって下さい」
「あ、ああ……」
 表情は変えぬまま、狂気を宿した茶色い瞳がぎらぎらと光る……人殺しの目。
「この学園を統べる立場にありながら、物の頼み方1つ知らないんですね……こんな人が生徒会長だなんて、失望しました」
「や、やってよ、せんしゃ……」
 2発目が、私の左頬に浴びせられる。
 ごんっ!
 どうやら私は壁に頭からぶつかったようだ
 視界が暗くなる、ごうごうと耳鳴りがして頭が割れそう。
 意識が飛ぶ寸前、遠くでみほの声が聞こえた。
「さようなら、転校届は後日出しますから」
「……ま、まっ」
 脳がまともに働かない状態で……わたしは意識を飛ばしかけたまま立ち上がり、よろめきながらみほに追い縋る。
「に、に、にし」
「しつこいです。会長、死にますよ」
「し、し、しんで……」
 死んでもいい。
 この学園が無くなるなら……柚子と桃と、みんなとバラバラになるなら、死んだ方がマシだ。
「しぬ、わたし、にじずみちゃ、にげられたら、じぬ」

 死んでもいい。いや、死ぬ。
 私は血の味のする口をおずおずと開き、自分の歯で傷ついた舌を思い切り伸ばした。
 ぼろぼろと涙が零れる目をぎゅっと閉じ、がくがくと震える身体をどうにかこうにか抑えつける。
「ひは、ひははんえ?、しう!」
 思い切り顎に力を入れ、歯を食いしばる。
 床に私の一部が血と共に零れ落ち、私は窒息して、失禁して……大洗の最期を見届けず、息絶え……。
「はひゅっ!?」

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