ドゥーチェとカルパッチョ
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! ルーチェ! ルーチェ! ルーチェ! ルーチェ! ルーチェ!』
(……意外と違和感は無いな。あの眼鏡がなんか言って来たら、『光』って言葉に何の問題がある? そう言い返せばいい!!)
ドゥーチェ改め『ルーチェ』コールに応え、大きな笑顔とピースサイン。
鞭を振り上げたアンチョビが、修理中のP40の上で派手なポーズを取った。
その晩。
アンチョビは蔵書と図書室から借りてきた資料を紐解き、第二次世界大戦のイタリア戦史、降伏後の内戦の詳細、そして装備品を入念に調べていく。
(イタリアの戦車のみでは、アンツィオの戦力をこれ以上高めるのは難しい。もし他校と提携してでも、1945年8月15日までに装備している戦車を手に入れられるのであれば、或いは……)
ツインテールをほどき、丸眼鏡をかけて資料を追うアンチョビの部屋のドアがコンコン、と鳴った。
「誰だ」
「カルパッチョです、ホットミルクをお持ちしました」
「ありがとう」
マグカップのホットミルク片手に、アンチョビは戦史の資料を読み続ける。
「どうしたんですか? こんな夜遅くに調べものを」
「私がドゥーチェから解放されたのをきっかけに、我がアンツィオに新たな光を与えられないかな、って」
「まあ」
ドゥーチェが入念に戦史や相手の戦力、戦術や過去の試合に基づき、水面下で綿密な作戦を立てていたのはカルパッチョも知っていたが、ちょっと様子が違うようだ。
「戦車道は勝ち負けだけではない、一生懸命戦って、敵味方分け隔てなくパーティーでもてなす。それがアンツィオの流儀」
「わが校にしかない美徳、そう誇って良いと思いますよ、ドゥーチェ」
「でもね」
丸眼鏡姿のアンチョビが傍らに座り、目の前の資料のページを手繰っていたカルパッチョを見つめる。
「勝負に勝つ喜び、負ける悔しさ――絶対勝てるはずがない強豪校に大番狂わせ(ジャイアント・キリング)で勝つ。そんな事を、一度でもやれればなぁ、って」
「ジャイアント・キリング……?」
ふっと顔を上げたカルパッチョの目に、強い意志の奥に寂しさが混じった、アンチョビの複雑な表情が飛び込む。
「私の代では無理だ。無茶はさせられなかった。アンツィオの戦車道を、全国大会2回戦に勝ち進めることができるまでに3年かかった」
「偉大な業績です。ドゥーチェが入学するまで、この高校には戦車道は事実上無いも同然でした」
「しかし、来年にはこのドゥーチェ・アンチョビはここにはいない。カルパッチョ、お前とペパロニで、みんなを引っ張っていくことになるんだ」
流れる時間は止まらない。カリスマを失う恐怖。アンツィオで最も知的で冷静な参謀の顔に暗い陰が射す。
「来年を、次を考えて、私は卒業していきたい。どうするかはお前たちが決めることだが……光の道筋
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