エリカとカチューシャ、ちょっとノンナ
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、エミュレートする。
「分かりました同志カチューシャ、ええと、子守唄を」
エリカが口を開きかけて、知っている子守唄を探す。
出てきた古い子守歌を口ずさむと、カチューシャがもぞもぞ動いた。
「ノンナ、なんでドイツの歌をうたうの?」
「!!」
「黒森峰じゃないんだから。ほかのお歌がいい」
「…………」
……知ってる子守唄、知ってる子守唄で、ドイツ以外の、ましてロシアのなんか知らないわよ、えっと、ええっと……!
窮したエリカは、故郷の民謡……熊本の子守唄を、蚊の鳴くような小さな声で歌い出す。
「変わった歌ね、ノンナ」
「同志カチューシャ、これは日本の民謡です。たまには珍しい歌も良いかと思いまして」
「うん……続けて」
ロシアの短調の子守歌とも違う悲しげなメロディと歌詞を帯びた子守唄を、布団の中の幼女の耳にかすかに届くか届かないかのか細い声で歌い上げる。
「……」
しばらくの間、同じ子守唄を繰り返しているうちに、カチューシャの手足が緩み、すうすうと静かな寝息を立てはじめた。
……情報を引き出すのは無理みたいね……ま、いいわ。
柔らかな髪を軽く撫でつけながら、エリカも目を閉じ、また眠りの世界に戻っていった。
つんつんと、小さい指が頬をつつく。
「ん? 何よ……」
眉をひそめて目を開けると、2つの瞳が、布団のなかからじーっとエリカを見ていた。
「おしっこ」
「は?」
慌てて言葉を飲み込む。そうだ、ここにカチューシャが寝ているんだった。
「ひとりでは行けないのですか?」
「こわいの」
「……」
エリカは軽い頭痛とめまいを覚える。カチューシャは、西住まほ隊長と同じ学年では? これでは、本物の幼児ではないか。
それに、さすがに廊下の明かりの下では正体がばれてしまう。
どうしよう、どうしよう。
「ノンナぁ」
カチューシャの身体が、ぷるぷると震えだした。
……うきゃーっ!! こんなところでお漏らしされちゃたまんないわ! ええい、ままよぉ!
「あっ」
エリカはカチューシャの顔を胸で抱え、自分の顔が見えないように抱っこし、廊下に出る。
抱っこの姿勢のままトイレの個室までカチューシャを連れて行き、扉の前で用が済むのを待った。
あの子守唄を、口ずさみながら……。
「またせたわねノンナ……っ!?」
扉から出てくるカチューシャを、顔を見られる前に急いで抱きかかえる。
「手、あらってない!」
「お部屋でお手拭きを出しますから、早く部屋に戻りましょ……!?」
むずかるカチューシャをあやしながらトイレを出た瞬間、横方向から冷たく尖った眼光を浴びた。
凄まじい敵意と殺意が、エリカの全身を襲う。
「あ、わ、あわ……」
ゆっくり、ゆっくりと、首を……眼光
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ