エリカとカチューシャ、ちょっとノンナ
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」
「承知しました」
※※東北弁、終わり※※
夕食の時間。旅館の大食堂は、熊本弁と東北弁と北海道弁、時折ドイツ語とロシア語が飛び交うカオスと化していた。
互いの存在を無視し、空気として扱う。見えないカーテンが下ろされているような状態。
入浴を済ませ、1時間早い消灯時間とし、エリカも布団に潜り込む。
手元の明かりを消して目をつぶり、うとうととまどろんでいると……部屋の扉が開いた。
隊長?
畳の上を、ひたひたと歩く足音。
「こんな時間に、何を……」
「ノンナぁ、……いっしょにねて」
「!」
布団に潜り込んできた背の小さな少女は……、プラウダ高校の隊長、カチューシャだった。
「……!?!?」
エリカが事の次第を飲み込めずに布団の中で硬直していると、小さなカチューシャがぴったりとしがみ付き、背中に手足を回してくる。
……スパイ? 陽動? ……まさか! この私を暗さt……。
「……カチューシャ、こわい夢みちゃった」
「え?」
「カチューシャがねるまで、このままでいて」
「あ、あ……」
「ノンナぁ、あたま、なでなでして」
パニック寸前の状況で、エリカは一つの結論に行きついた。いや、そう考えるしかなかった。
このちびっこ隊長、黒森峰の不倶戴天の敵、プラウダの暴君『地吹雪のカチューシャ』は、寝ぼけて私をノンナと勘違いしている!
叩き起こして部屋から摘み出すべきか、フロントに電話して正しい部屋に連れて行ってもらうべきか、それとも……。
「……えっと」
「どーしたの?」
とりあえずはノンナのふりをしてみよう。エリカは間諜の授業で習ったロシア語で呼びかけてみる。
「Катюша,Ты в порядке?」
「日本語ではなしなさいよ……むにゃむにゃ」
……あれ?
首を傾げながら、カチューシャの要求通りに布団の中の小さな金髪を優しく撫でつける。
「えへへ」
……もしこの私をノンナと勘違いしてるなら……作戦の秘密を聞き出せるかも知れないわ!!
エリカは極めてポジティブな思考で、この珍客を迎え入れることにした。
「ねぇノンナ、お歌をうたって」
「歌?」
しばらくの間頭を撫でつけていると、胸に顔を埋めて静かに息をしていたカチューシャが、首を上に向け、エリカの瞳を見つめる。
髪の色も顔もぜんぜん違う、バレる!と思ったが、彼女の瞳はとろーんとしていて、自分が抱きついている人間の区別すら曖昧になっているようだ。
……何よ、こんな寝ぼけたガキンチョに去年の私たちは負けたっていうの!?
怒りとも失望ともつかない感情が湧き上がってくるが、カチューシャに悟られてはまずい。
乱れた感情を抑えつけると共に、過去の記憶からプラウダの副隊長『ブリザードのノンナ』の口調や声色を掘り出し
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