西住みほと角谷杏
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ない」
「会長……」
「だれも、あんな目には遭わせ……ううっ」
膝の上の会長の頭が震え、涙声になる。
「う、うう、ぐず……っ。ごめんね、おかしいよね、廃校、無くなったのに……思い出すと、泣けちゃ……ぐず、っ」
泣き震える会長の頭を抱きかかえる。涙の滴が、制服の袖を濡らす。
「いいよ西住ちゃん、制服が濡れちゃう」
「いいんです会長。泣きたいときは泣いてください。泣きたいのに泣けないのは、辛いですよ」
「……ありがとね、西住ちゃん。う、う……」
陽が傾き一番星が輝き始めるまで、わたしは会長の頬と髪をずうっと撫で続けていた。
「そろそろ、戻る」
「あ、もうこんな時間なんですね」
会長と一緒にいると、時の流れが止まる……気が付けば時間が過ぎている。
ウエットティッシュを手渡すと、会長は頭を起こして涙の跡を丁寧に拭い取ってから顔を拭く。
「さて、と。……あーあ、メールと着信がいっぱい来ちゃってる、困ったねー」
サイレントにしていた携帯をポケットから取り出し、うぇっと言いながら舌を出した。
「まだまだ引き継がなければいけないこと、いっぱいですね」
「西住ちゃんもだよ。戦車道、来年もよろしくね」
「はい!」
会長の、何の屈託もない……わたしだけに見せてくれる笑顔。
わたし、うまく笑えてるかなぁ。
ちょっとだけ心配になるけど、せいいっぱい思いっきりの笑顔になってみる。
会長との高校生活もあと半年……1秒でも多く、この笑顔を見ていたい。
大洗に来て、一生懸命に戦車道をやった成果が……この杏の明るい笑顔だったとしたら。
……わたしの戦車道は、なんて実りのある果実を手に入れてしまったんだろう。
幸せですよ、会長。
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