ドゥーチェ・アンチョビと西住みほ
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自分ひとりの力だけでどうにかしようとしていないか? 鉄の掟、鋼の心と絶対服従、そんな事は大洗では無理だろう」
「うん、たぶん」
「だとしたらだ。ただの仲良し集団じゃ困るけど……みんなの意見を聞き、いい所があれば自分の想いも変える柔軟さと、いちど決めたことを迷わずやり通す決断力」
「柔軟さと……決断力」
「そして、ただひたすらに冷静沈着だけではない。――えーと、言い方は難しいけど――仲間を奮い立たせるには、力強い弁舌や冷静さとも違う。他の方法が取れるかもしれない――これも柔軟さかな?」
「わたし……口下手で、みんなの前では上手く喋れなくて」
「逆境……『死』を切り抜けるために、今を楽しもう。明日を楽しむために今を頑張ろうよ――そんな簡単な事でもいいじゃないか。その簡単さからきっと答えは出てくる」
「……」
「私はあの子たちが怪我をしないように注意しながら、楽しく生きて、勝とう。また明日楽しく生きる為に。……私と一緒に頑張れば、きっと強くなれるぞ! ってみんなに言い続けて――ここまでやってこれた」
「アンチョビさん」
「今のお前は西住の名を忘れて、自分のやれることをしろ。逆境に陥った時何ができるか考え抜き、みんなが付いてきてくれる――そんなやり方でいいんだよ」
「……っ」
また泣き出しそうになったみほの背中に腕を回し、胸に顔を埋めさせ、ぎゅーっと抱きしめる。
「よしよし……泣くな。もう寝よう、みほ」
「はい、アンチョビさん」
「おやすみ、みほ」
「おやすみなさい」
真夜中――アンチョビは、耳に入ったみほの微かな言葉で目を覚ます。
「みほ?」
「――お姉ちゃん」
「ん? 寝言か……」
「……お姉ちゃん――ごめん」
両目からほろりとこぼれた涙を、アンチョビが指で拭う。
「今晩だけ、私はお前のお姉ちゃんだよ、西住みほ」
「んふ……。……お姉ちゃん」
涙を拭った指で、そっと頬を撫でる。
そして柔らかい唇に指を触れると――口元を緩ませたみほが、軽く、指に、キスをした。
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