西住みほと逸見エリカと赤星小梅
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逸見エリカは夢を見ていた。
もし西住みほが黒森峰を去らず、副隊長のままだったら。
ある日西住まほ隊長から聞いた、子供の頃のように天真爛漫な性格のみほだったら。
自分のそばに今でもみほがいてくれたら……。
目を覚ましたエリカは、止めどなく流した涙で枕が濡れている事に気付く。
「また、あの夢……」
眩しい笑顔で笑うみほ。西住流の縛りなどお構いなしの奇襲と突撃が大好きなみほ。自分と一緒に隊長に怒られ拳固を喰らい、互いに目を合わせてケタケタ笑うみほ。
「……」
ベッドから這い出し、パソコンの電源を入れる。
『いつもの夢』フォルダを開き、右クリックしてテキストを新規作成し、ファイル名に日付を振る。
……。
「エリカ! いつもの奴行くよ!」
「はぁ? いい加減にしなさい! こんだけ包囲されてんのに突撃する気なの? あんたいつから知波単の子になったのよ!!」
「どうせ負けるなら最後に一発、おっきい花火打ち上げようよ、ね?」
「馬鹿、みほのばーか!」
「アハハッ、馬鹿に馬鹿って言っても効かないよー」
「分かったわ。先にやられたらアイス奢りなさいよ!」
「何段重ねがいい?」
「3段!!」
「じゃ、わたしが突破出来たら5段重ね奢って!」
「5段でも10段でも奢ってやるわよ! ……副隊長車に続けっ! 蛇行しながら敵弾回避しつつ行進間射撃っ!」
『り、了解!!』
……。
ひとしきり夢の内容を書き上げパソコンの電源を落とす頃には、窓のカーテンの外が明るくなり始めていた。
ベッドに身を投げ出し目を閉じる。また、涙がぽろりとこぼれ落ちた。
if、if、if……一つでも選択肢が違えば、今のこの世界は別のものになっていた。
1つでもifが違った並行世界。そこはどんな色で、どんな風が吹いているのだろう。
「人生は選択の連続である――シェークスピアですね」
どこかの誰かの口調を真似て独り言ちながなら、エリカはifの世界を妄想する。
でも、妄想は妄想。あと1時間もすれば黒く深い森の現実が訪れる。
妄想は終わり。黒森峰女学園の皮肉屋にして副隊長、逸見エリカに戻らないといけない。
流れる涙も拭わぬまま目を閉じ、つかの間の眠りの世界へと身を沈み込ませた。
…………。
西住まほ隊長は卒業した。今は自分、この逸見エリカが隊長だ。
西住流の伝統を守る黒森峰女学園を一身に背負う立場。
3度のV逸は許されない。西住みほの大洗戦車道に終止符を打ち、断絶した黒森峰の不敗伝説を再開せねばならない。
胃がきりきりと痛む。夜中に足が攣り激痛にのたうち回る。噛み過ぎた爪がボロボロになる。
ここはifの最悪の結果なのだろうか?
否、戦車道強豪校である黒森峰の隊長。西住まほ、そして西住
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