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八神家の養父切嗣
三十三話:傍に居る人
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ナのこういった反応はツンデレと言うのだろうなと心の中で思う。しかしながら言葉にすれば弾丸が飛んでくるかもしれないので胸の内に留めておく。

「あの子大丈夫かな?」
「体は大丈夫だと思うわ。ただ、あの子がどういった扱いを受けるのかは分からないけど。そもそも、なんでレリックなんて物騒なものを持たされていたのかも分からないし……」

 地下水路から現れた謎多き少女のことを考察する二人。何かしらの事件に巻き込まれているのは間違いないだろうがそれが何なのかは分からない。どちらにせよ最終的な判断を下すのは自分達ではなく隊長達だ。

 今の自分達は与えられた役目を全力でこなしていくしかない。他のことにエネルギーを割けるほど自分達は強くはないのだから。そして何よりも、他人よりも自分のことを心配するべき人物がいるだろうとティアナはスバルにジト目を向ける。

「というか、あんたは自分のことを心配しなさい」
「え? なんで?」

 キョトンとした表情で本気で分かっていないという顔をするスバル。その様子にティアナは怒りを通り越して呆れを感じてしまい溜息を吐く。つい先日に自分自身が敵に執拗に狙われたというのにそれを忘れている。

というよりも最初から自分を心配するという勘定から排除しているとしか思えない。以前から時折感じていたスバルの歪みをハッキリと感じティアナは問いかける。

「あんた、自分のこと考えてる? 昨日狙われたばっかりでしょ」
「―――あ」


 ―――もし、君が自分を救う勘定に入れていないのなら、君には誰も救えないよ。


 スバルは自分のことを考えているかと言われて男の言葉を思い出す。自分一人救えない人間に一体何が救えるというのだ。それはぐうの音もでない正論であった。今だってそうだ。自分よりも他人のことを考えて、自分のことなど考えようともしていなかった。

 今まではそれでいいと思っていた。しかし男と会ったことでその想いは揺らぎ始めていた。彼女は誰かを救わなければならないと願う。だが、誰かを救うためにはまずは自分を救わなければならない。だというのに、自分は誰かを救うことをしなければ救われない。

 矛盾だ。まずは自分を救わなければならないのに、誰かを救わなければ自分は救えない。どうすればいいのか分からない。そもそも普通の人間はどうやって自分という存在を救っているのか、赦しているのか、皆目見当もつかなかった。

「……スバル? どうしたの、急に黙って」

 黙り込んだ自分をティアナが心配そうに覗き込んでくる。そうだ、彼女に聞いてみれば分かるかもしれない。スバルは長年の相棒に希望を託し顔を上げ、口を開く。

「ねえ、ティア。あたしは何をしたら―――生きていてもいいのかな?」

「スバル……あんた…何を
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