角谷杏と河嶋桃と小山柚子
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杏だよ」
河嶋桃の目は、杏の指を追う事を止めていた、ぼんやりとしてて、焦点が合っていない。
続けて、耳元で囁く。河嶋桃の娘、杏として。
『ママ、ランドセルありがとう。わたし、一生懸命勉強して、パパとママをぜったい幸せにするから、ね』
「あ、うう、ああ……杏ううううう!!!」
桃が目に涙をため、杏をきつく抱きしめる。
「ありがとう! ごめんねこんな泣き虫ママで! 本当……にありがとう! ここまで育ってくれて。ママ、ママ、嬉しくて……うぇえええええええええ!!!!!!!」
「あ、かーしま? 隣に小山がいるから、ちょっと」
ちょっとした悪戯心で、最近流行ってると聞く催眠を試してみたが……かけた相手が悪かった。
催眠術にかかった桃の心は、杏の想定よりも遥かに先まで行ってしまった。
「大洗の制服……すごく似合ってるよ杏。まるで私の、私の中学時代……うぇぇぇぇ。大学決まって良かったね。みんなと一緒なんだ、良かった、良かったよぉぉぉ……、え、その人誰? ……うわぁぁぁぁぁ!! お嫁に行っちゃやだぁ、ママを置いてかないでぇ、やだやだやだぁ! ママこれからどうやって生きてくの!? パパも杏がいなくなって寂しくないの!? 黙ってないで何か言いなさいよ!!!!」
「桃ちゃん?……どうしました? 会長」
あ、やばい。
泣き叫ぶ桃の声で、柚子が目を覚ましてしまった。
「あー。えっと、かーしまが怖い夢をみちゃったみたいなんだ、ちょっと落ち着かせてくる」
「一緒に行きましょうか?」
「大丈夫、小山は寝てて」
「はぁ……」
杏は泣きじゃくる桃の手を引き、別室……生徒会長専用の休憩室に入る。
ソファに腰掛け、桃を寝そべらせて膝枕させ、泣き止むまでそおっと背中を撫で続けた。
「……会長」
「かーしま?」
「酷いです」
膝に顔を埋めたままの桃が、一言呻いた。
「ごめん」
「何てものを見せるんですか……私は授かり婚なんて絶対しませんよ」
「そうだな」
静かに顔を上げた桃に、杏がタオルを渡す。
泣きはらした顔を拭き、きりっとした顔で杏の顔を軽く睨んだ。
「でもねかーしま、1つ約束してほしいんだ」
「はい」
「卒業して、好きな人が出来たら……私か柚子に、一言でいいから、相談してくれ」
「……なぜ」
「お前を不幸にする男となんて、絶対に一緒にさせたくない」
「いえ、そこまで心配される筋合いは……会長?」
杏が、強く桃にしがみつく。幼子が自分の母にそうするように。
「頼む。お願いだから、かーしま」
「……」
桃が、我が子にそうするように、杏の頭を優しく撫で、頭を胸で抱き寄せる。
「分かりました会長。もし離れ離れになってしまっても」
「私たち3人は、ずっと一緒だ」
「桃ちゃん
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