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ガールズ&パンツァー SSまとめ
西絹代とアンチョビ
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長の黒髪と『褐色の悪魔』のたてがみが同時に宙を舞ったとき、誰からともなく歓声が上がった。
 その姿は、形容し難い躍動感あふれる美しさ……ああ、また『負けた』という感情が心を突き抜ける。

 彼女はひとしきり美技を我々に披露した後、うなじを撫で馬を労い、息を弾ませながら戻ってくる。
 驚嘆の声を上げた部員と握手を交わし、共に馬装を解き、褐色の悪魔の馬体を綺麗に洗い厩舎に納めてから、私の所に戻ってきた。
「急な申し出にも関わらず本当にありがとうございました」
 馬術部の部長と私を前に、深々とお辞儀をする。
「お礼を言いたいのはこちらです! あの馬をあそこまで乗りこなせるなんて! さすがはバロネス……」
「いえ、今のわたくしは戦車道の隊長なので……もうその名ではありませんよ」
 興奮気味の部長の手を握りながら、優しく微笑む彼女。
 卑怯じゃないか! 能天気な吶喊娘だと思ってたのに!
……戦車から離れたらこんなにも凛々しく、美しいなんて、さ。

 心地よい汗をかいた彼女をローマ式の風呂に誘う。汗を洗い流してから学園艦に戻ったらどうか、と。
 恐縮しながらも提案に乗ってくれた彼女を前にして、私は喜悦の表情を隠し通すのに精一杯。
 ペパロニやカルパッチョに、時としてからかわれるひそかな悪癖。
 綺麗な女の子への……興味。
 乗馬服で締め上げられたその中身、西の肢体をこの目で見たい。
 脱衣場で一糸まとわぬ姿となり、自慢の大浴場に案内すべく振り返った私の視界に……白い絹のような、美しく鍛え磨かれた身体が飛び込む。
「どうかしましたか? アンチョビ殿」
「……あ、いや、なんでもない……足元、滑らないように気を付けてくれ」
 無意識のうちに差し出した私の手に彼女の手が触れた時、身体の中をごうごうと血液が駆け巡る音が聞こえた。
 そのまま抱きつきたくなる欲望をはねのけ、湯船へと案内する。
 一度意識し始めてしまうと、もう視線を交わす事はできない。
 負けた。
 彼女を私のものにしたいという気持ちが、彼女のものにされたいという気持ちに負けてしまったんだ。
……ここで彼女に身を任せたら私はどうなってしまうんだろう。
 不道徳、ふしだらな欲望が頭をよぎるたびに、豪華な装飾の施された大浴場の天井に視線を泳がせ、気を紛らわせるしか術がなかった。
「アンチョビ殿、随分と顔が赤いです。もしやお湯にのぼせてしまったのではないでしょうか?」
「ううん、気にしないでくれ、いつもこうだから」
「いや、目もぼんやりとしております。風呂から上がりましょう!」
「あ、ちょっと」
 湯船から上がる西に手を引かれた私は、彼女の全身……艶めかしい曲線を描く裸体を後ろから全て眺める形となった。
 ああ、ああ、ああ。もうダメだよ、助けて。私の悪魔が目
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