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ロザリオとバンパイア〜Another story〜
第50話 力の大妖
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殆ど動けていない砕蔵は、今度はその中を悠々と歩くカイトに驚いていた。


 そして、その砕蔵の後ろでは、覚醒したモカが目を見開いた。

「(これが… バンパイア…)」

 月音は、モカの十字架(ロザリオ)を握りしめ、僅かに震えながら見ていた。

 それでも、決して目をそらさないように。カイトが言っていた言葉、『何も変わらない』
 その言葉を、懸命に頭に入れて。

「噂通りの赤い瞳!! そして強大な妖気 こいつが…こいつがあの力の大妖、バンパイア!?」

 砕蔵の恐怖が最高点に達したその時だ。


「………どうしたはぐれ(・・・)の…」


 モカが初めて口を開いた。


 ただ、それだけで砕蔵は巨体を、更に震わせた。

「私が……欲しいんだろ? なら、得意の力づくで……、私を奪ってみろよ。 ほら………、 どうぞ?」

 その圧倒的な力の前に、動けなかった砕蔵だが、恐ろしくも美しいモカにここまで挑発されたら、黙っていられる筈もなく。

「ううっ! うおおおおおおおおおお!!」

 モカの身体よりも遥かに大きい腕を、一気にモカに振り下ろした。


「モッ… モカさん!!」


 それを見たつくねは思わず叫んだが……次の瞬間には、息を呑む。


「はっ…?」


 砕蔵は完全に振り下ろした筈だった。衝撃が拳にも伝わった筈だ。なのに、それ以上……拳が進まない(・・・・)のだ。


「…この程度の力でこの私を襲うとは」


 何度も何度も押しても、まったく腕が動かない。そして、腕を引く事も出来ない。


「(な…なんでよけねェ 何でビクともしねェーーーーッ)」


 腕を捻り上げられ、身体の自由も全く効かない。

 見た通り、全てはモカの手のひらの上だ。



「身の程をわきまえるがいい」



 その時点で、勝負アリと言っていい状況だが、赦す筈もない。
 ひねり上げた砕蔵の身体を宙に放り上げると、落ちてきたタイミングに合わせて、側頭部にモカの蹴りを撃ちはなった。

 ずぎゃああっ! と言う先程の月音への衝撃音よりも遥かに鈍くけたましい音。身体に身体をぶつけた様な音とは思えない。


「ぎゃあああああああァ」


 そして、人間の身体よりは遥かに丈夫である身体だが、モカの攻撃に耐えられる筈もなく、骨の折れる音をさせながら、遥か後方にある、墓場の方へ吹き飛んだ。


「でかいだけの低級妖怪が力比べの相手にもならないな」


 モカは手を払いながらそう告げた。

 だが、砕蔵は腐っても妖。
 まだ、意識はしっかりとある様だ。重症、とは言えない。モカも全力で蹴ってはないだろう。覚醒した直後、即ち寝起きの様
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