賊に支配された村
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は俺が男としてのプライドがあるからなのか。
それが分かっているのか、星は妖しい笑みを浮かべる。
「ふふ、今の縁殿は可愛いですな。」
「か、可愛い!?」
思わず声が裏返る。
それを聞いた星は堪えかねてのか、大きく声をあげながら笑い出す。
俺はさらに恥ずかしくなり、顔を俯かせる。
ちなみにだ。
この会話に一刀は一切入ってこない。
理由は簡単だ。
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・・ぜぇ・・・・」
息をするのも苦しいような息を吐きながら、俺達より五歩くらい離れた位置を歩いている。
手に持っている木刀を杖代わりにしながら、必死に歩いている。
馬には荷物などを乗せているが一人くらいなら乗る事はできる。
けど、一刀は乗らない。
少し心配したのか星が後ろを確認しながら、俺に囁く。
「縁殿、よろしいのですか?
一刀殿をあのままにして。」
「さっきも言ったけどこれも修行だ。
何より、あいつ自身から乗る必要はないって言ったんだ。
俺はあいつの意思を尊重するよ。」
それが一番の理由だった。
星が旅に同行するようになって、彼女も一刀の修行に付き合ってくれた。
その為か普段の修行よりもきつくなり、今のように息も絶え絶えになっている。
修行が終わった時には足は震え、肩で息をして木刀を杖代わりにしないと歩けないくらい疲労が溜まっていた。
さすがに、俺も馬に乗って休憩しろと言ったが、一刀は息を切らしながら言った。
「はぁ・・・い、い・・・
これ、も・・はぁ・・はぁ・・・しゅぎょ、う・・・」
それだけ言って一刀自ら歩き出した。
だが、歩くペースは遅く今の状況になっている。
この旅で一刀は自分の存在がどれほど大きなものであるのか認識しつつあった。
街などによると一刀の噂は広まっていて、彼にこう言う者が増えてきた。
「御使い様!
どうか・・どうか、この国を救ってくだされ!!」
別に一刀に金をくれとか、早く平和にしろなど言ってくる輩もいるにはいた。
しかし、さっきのように心から一刀にお願いをする人が圧倒的に多い。
早くしろ、とかそんなのではなく、この国を救ってほしい。
単純な願いだ。
天の御使いという不確かな存在にすがりつかないと生きていけない人達が多かった。
それを聞いて回ってからだろうか。
一刀の剣の重さが増してきたのは。
あいつはあいつなりに自分の肩書きの重さを受け止め、背負っている。
だが、今のあいつは明らかに無理をしている。
このままでは取り返しのつかない事になるだろう。
腕に力が入らないのか、支えになっている木刀が滑る。
そのまま前に倒れそうになる所を俺が支える。
「ったく。
一旦休憩を入れるぞ。」
「ちょ・・・まだ、行ける。」
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