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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第138話 反魂封じ
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那を千に切り分けながら、術の行使を続ける俺。両手に関しては重度の熱傷。既に痛みを伝えて来ている神経をカット。
 但し、それがどうした! 生きていさえすれば、腕の一本や二本どうにでもなる!

 奥歯を噛みしめ、血液さえも沸騰し兼ねない熱に耐え、更に供給する龍気の量を増加させた。刹那、処理能力を超えた脳が悲鳴を上げる! しかし、それも無視!
 心臓が負荷に耐えかねて跳ねまわり、自らの意志で無理矢理に動かし続けている非常に危険な状態。果てしない絶望と言う名の深い穴の縁に、腕一本で辛うじてぶら下がっているかのような気分。
 炎の蛇に精霊の守りが喰われる度に複雑な幾何学模様が浮かび上がり、僅かに虚無を押し返す。そう、この幾何学模様……魔法陣を構成するその蒼白き線一本一本が、この絶望的状況への反抗。このすべての線が消えた時が、俺が膝を屈する時。

 その刹那。防御の一角が破れた!
 空中からうねり、のたくる触手の束が接近して来る。本来、神聖なはずの聖域を照らし、暖める炎から今、俺が感じているのは、何故か暗いネガティブなイメージ。肉――タンパク質や脂肪が焦げる嫌な臭い。
 事、ここに至っては最早、術に因る周囲の熱の低下も間に合わない!

 高速で印を結び、思考は複数の術式の同時起動を行いながらも、刹那の時間、呆然としてその触手群を見鬼で捉えて仕舞う俺。
 既に肉眼は役に立たず。これほどの熱。更に発生し続ける光子の影響は流石に大き過ぎた。

 万事休――いや、未だだ!
 死中に活を求める! 本当の意味の限界と言う物は、その人間が感じた限界の更に向こう側にあるはず!
 周囲に巡らせた結界の半径を更に狭め、より強固に、分厚くした結界で対応。
 続けて周囲を取り巻く炎の触手が放つ光、及び、対消滅らしき現象により発生する大量の光子。……つまり、光りにより作り出された自らの影たちに別々の印を結ばせる事により、思考のみで唱え続けて来た術の強化!

 更に!

「バン、ウン、タラク、キリク、アク」

 攻撃は最大の防御! 一時的に空気の生成を止め、その部分を攻撃へと転用!

「悪霊退散。禮!」

 描く五芒星は小さく、精霊の輝きも弱い。更に重度の熱傷により右腕の動き自体が鈍い。しかし、委細構わず、その中心に刀印を突き立てる俺。
 刹那!

 猛烈な光輝が発生! 同時に身体に感じる爆音、爆音、そして、高く響く弦音。



「あんた、何を考えているのよ!」

 あんたはいちいち危なっかしいのよ! 馬鹿なの? 死にたいの?
 俺の頭の上で小学生女子の甲高い声が。そして、彼女の声に重なるように鳴弦の澄んだ音色が次々に放たれる!
 周囲を覆っていた炎の触手の気配は既になく、氷空は霧とも、闇とも付かない物質に覆われながらも、
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