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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第138話 反魂封じ
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行く。

 マズイ! このままでは例え、犬神使いの封印に成功したとしても……。

 既に肉眼としての視力は奪われ、気配と見鬼の才でしか周囲を把握する術を持たなくなりながらも、そう考える俺。その瞬間にも猛烈な(霊気)を放っていた晴明桔梗と、それに呼応していたターコイズの光が徐々に力を失って行く。空中に浮かんでいた魔法陣は既に虚無へと呑み込まれ――
 確かに一瞬前まで目前に存在していた犬神使いの青年の気配は消えている。
 封印は間に合った。しかし……。
 このままでは何れ俺自身が虚無に呑み込まれて仕舞う!

 既に、俺を中心に一メートルほどの空間を死守しているに過ぎない絶望的な状況。現実に封印に要した時間は三十秒と掛かっていないはず。
 しかし、その三十秒が致命的な遅れと成りかねない!
 複数の術式の同時起動。諦める訳には行かない。帰ってからハルヒに挨拶に行かねばならない。
 そして何より、有希との約束を果たす為には、絶対に彼女の元に帰り着かなければならない!

 更に加速の強化。時間とは心で感じる物ではなく、身体が感じる物。心の持ちようによって、体感時間が変わるのがその際たる例。ならば、生命の危機的状況である今ならば、更なる加速もまた可能となるはず!

 防壁の術式に、その防壁の強化の術式を重ね、それを次々と立ち上げ続ける俺。想いを力に、約束を糧にしながら、易き道へと流れそうになる心を震わせ続ける!
 諦めなければ道はある。俺は今、一人ではない!
 そう、ラグドリアン湖で共工の毒のブレスを防いだ際に、タバサと共同で為した術式を今は一人で再現して居たのだ。
 同時に、周囲に清涼なる空気の作成と、異常なまでに高まった温度を人間が活動出来るレベルにまで冷却する術式の起動。

 最早、物理学的に何が起きて居るのかさっぱり分からない状態。そもそも、俺の纏う精霊光とヤツ……這い寄る混沌の分霊を構成していた炎とが反応した結果、猛烈な光子を発生させる科学的な根拠が謎。考えられる仮説は、ヤツと俺が次元を挟んだ表裏一体の存在である可能性がある。この程度。
 次々と印を結ぶ手が熱を帯びる。但し、これは気力が充実しているから、などと言う呑気な状態ではない。普段ならば、少々高速で印を結んだとしても大気との摩擦など起きはしない。何故ならば、その程度の熱や摩擦など、俺の精霊の守りでペイ出来るから。
 しかし、現状は精霊の守りをすべて炎の触手対策に振り分けている状態。まして、周囲は炎で囲まれて居る以上、元々、俺の存在する空間は、異常な高熱に晒されているのだ。

 つまり、折角周囲の熱を下げる術式を起動させても、術を高速で、更に複数立ち上げ続けて居る以上、大気との摩擦から発生する熱を下げ続ける事は不可能だ、と言う事。

 一秒を百に。刹
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