第6章 流されて異界
第138話 反魂封じ
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びが集まり、響き――
終に、世界が変質した。
最初から深く立ち込めていた濃い霧……いや、闇自体は変わらず。しかし、その闇が凄まじい速度でうねり、重なり、巨大な闇の集合体と変じた。
世界が深い闇に沈み、辺りの景観を黒く霞ませる。
マズイ!
目の前の犬神使いよりも強力な異界を引き寄せる能力者が居た。確かに、ヤツ……名づけざられし者の事を失念していた訳ではないが……。
俺を異界送りにしたり、各種邪神を召喚したり。今までのヤツの行動から推測すると、ヤツに取って次元の壁を破る事は呼吸をするより容易い事らしい。まして、神話的な裏付けのないこの事件の首謀者の犬神使いに出来る事は、幾ら下駄を履かせたとしても高が知れている。……が、しかし、ヤツならば千年以上、この地に住んで来た人々が積み上げて来た呪であろうとも物ともせずに、アラハバキを召喚して見せるかも知れない。
それだけの神話的なバックボーンを、あの茫洋とした青年は有している。
但し、アイツ……名づけざられし者に関して対処して置くのはそもそも不可能。
ヤツはありとあらゆる時間、あらゆる世界の隣に居る存在。これはつまり、自らが望む場所へと確実に顕われる事が出来る、……と言う事。
ましてヤツに与えられた属性は、本来の名づけざられし者などではなく、門にして鍵。ここまで高い異界への親和性を手に入れた地で異界への門を開く事など児戯にも等しいだろう。
暗雲が占める氷空は光を失ってから久しく、必要以上に冷たい大気と猛烈な風が吹く世界は、名づけざられし者が召喚の儀式を行うに相応しい状況。
先ずは目の前の犬神使いを完全に封印する。アラハバキに対処するのはそれからだ。
そう考え、握った宝石……トルコ石に龍気を籠める俺。
その時……何処かから聞こえる遠吠えが、低く尾を引いた瞬間、炎が乱れた。
神籬の四隅に置かれたかがり火。それまでは奥羽山脈から、そして、俺が起こした大元帥明王法により発生した風に煽られ、時折、くべられた薪から紅蓮の火の粉が舞う、このような夜に行われる神事には当たり前のように存在しているかがり火。
しかし、その瞬間。何の前触れもなく、一際高く……まるで、その瞬間に生命を得たかのように氷空高く炎が立ち上がり――
それがまるで人の如き影を作り上げ――俺たちを睥睨した。
「やぁ、皆さん。お元気そうで何よりです」
「悪霊封珠、禮!」
炎の人型が現われると同時に術式起動用の最後の龍気を籠められる封印用のターコイズ。そして、ヤツが言葉を発するとほぼ同時に最後の点穴を穿つ俺。
瞬間、完全起動した晴明桔梗が――
その直後、僅か数十秒の間に世界に起きた出来事。
猛烈な光。炎の触手
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