第6章 流されて異界
第138話 反魂封じ
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但し、俺自身は別に腕を失うのはこれが初めてと言う訳ではない。確かに視力が回復しない場合、多少の影響はある。例えば遠近感などが多少は曖昧となるなど。しかし、それでも多少だ。大勢に……これから先に予測される戦闘に大きな影響はない。
……と思う。
大体、仙人と言うのはそう言う存在。ハルケギニアに召喚され、湖の乙女と再会してからの俺は、それ以前の俺とはかなり違う存在へと変化しつつあるのも事実。
更に、タバサと血の盟約を結んだ事により、俺には吸血鬼の回復力が多少、付与されている。
先ほどの攻撃でも、俺の息の根を完全に止めるには僅かに届かなかった、……と言う事なのでしょう。
「あんた、そんなに死に急ぎたいって言うの?」
その手じゃもう今夜は何もしなくて良いわよ。
それまでの激高した雰囲気から一変。まるで姉が弟を諭すように、普段の彼女からは考えられないような優しい声音で話し掛けて来るさつき。一瞬、俺の左手に触れようと自らの手を差し出し掛けて、しかし、それは流石に躊躇われたのか直接触れて来る事はなかった。
……おそらく、俺の想像以上に熱傷が酷い状態なのでしょう。しかしそれは、俺に対しては無用の気遣い。
「そんな訳はないやろうが」
確かに悪心は続いている。妙に息苦しい感覚。ついでに非常に大きな脱力感。それに、これが決定的な心臓の鼓動の異常。
仙術の基本は身体の理解と支配。それは当然、不随意筋である心臓にも及ぶ。つまり、大抵の仙術を行使出来る道士や仙人は、自らの心臓を自在に操る事が出来る、と言う事。
そのはずの俺の心臓が、現状、自らの意志で完全に制御出来ない状態。無理矢理に口から息を吸い込み、気を抜けば止まろうとする心臓や肺を強制的に動かし続けている今の状況は異常事態だ、と言わざるを得ない。
しかし……。
「少なくとも俺は生き残って、犬神使いの封印にも成功して、今ここにいる」
これ以上の結果が何か必要か?
敢えて今の体調の事は無視をして、逆にさつきに対して問い掛ける俺。
そう。今の俺の状態は普通の人間……ドコロか、心臓が動いて血液を送り出して生きている真っ当な生命体なら、とっくの昔に死亡していても不思議ではない状態だと言う事。
おそらく想定以上に被害を受けて仕舞った筋肉から大量のカリウムが血液内に流出。それが心臓に悪影響を及ぼしているのでしょう。
但し、それがどうした。俺は未だ死んではいない。心は折れてはいない。
未だファイティングポーズを取る事を止めてはいない。こんな人間に対して、後ろで黙って見て居ろ、と諭したとしても、聞く訳がない。
特殊な呼吸法と、大地から、自然から直接気を取り入れる事で表面から見て、分かり易い形で受けた傷に関
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