第百一話
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『どれ。踏み潰してやるか――』
プレイヤーショップに携わる者としては、反応せざるを得ない宝の山にまみれた広い部屋。エクスキャリバー入手クエストにおけるダンジョンの最下層にて、遂に俺たちは霜の巨人王《スリュム》と対峙していた。恐らくはこのクエストのラスボスであろうソレは、まるで山のような大きさで俺たちを睥睨していた。浮遊城というその特性上、あまりにも巨大なサイズという訳ではなかった、かのアインクラッドのボスとは違い。見上げなければならないほどの身長の違いから、まさしく真に《巨人》と呼べる存在だった。
『おや。そこにいるのはフレイヤ嬢ではないか。儂の結婚相手になる決心がついたのか?』
「けっ、結婚相手だぁ!?」
そんな筋肉隆々とした肉体の上から俺たちを見下ろすスリュムだったが、俺たちの背後にいたNPC《フレイヤ》を見据えた。見事に生えた髭をさすりながら言い放ったそのセリフを、少し離れた距離にいるサラマンダーのサムライが過敏に反応する。
「何を世迷い言を。こうなれば我が宝、力ずくで奪い返すまで!」
そんなフレイヤの雄々しい否定の意味を込めた宣言に、俺は僅かながらこのNPCたちのバックストーリーを理解する。お宝をスリュムに奪われたフレイヤは、取り戻そうと単身乗り込んだが、それは適わず捕まってしまったのだろう。こうなればパーティーメンバー皆が危惧していた、後ろからあのフレイヤに襲われるという心配はなくなったらしい。
『気丈な奴よ。ならば力ずくで儂のものにさせてもらおうか』
「フレイヤさんをお前なんぞに渡すかゴルァ!」
サムライが一歩前に出るとともに、その戦いは開始された。白い髭をさすっていたスリュムが手を離し、その腕を準備体操の如くグルグルと腕を回す。そのままゆっくりと歩を進むスリュムに、俺たちも総員でそれぞれの武器を構えた。
「スリュムにフレイヤ……うーん……」
「みんな! ひとまずはユイの指示を聞いて、とりあえず攻撃パターンを探ってくれ!」
このゲームの大元となった北欧神話に詳しいリーファの呟きは、近くにいたメンバー以外には、キリトからの伝達で遮られ。タイムリミットもあるため、あまり時間のかかる戦い方は出来ないが……全滅してしまっては元も子もない。慎重策を取るキリトの指示にパーティーは従いながら、ひとまずはスリュムの動きを注視する。
『そぉら!』
「皆さん! 別れてください!」
スリュムが最初に放った攻撃は、そのグルグルと回していた腕による一撃。ただ拳を振り下ろしただけだったが、それだけでも高位魔法と同程度の範囲を誇っていた。地震のような効果もプラスされ、ユイの警告がなければ、それぞれに別れて避けることは出来なかっただろう。
「ちぇいさ!」
「今の
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