第百一話
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その正体は、トンキーを背負うように下部に現れた巨大な黒羊。突如として現れたそれの頭の上では、ユウキとレインがぶんぶんと手を振っていた。
「……はい?」
「タングリスニ……」
理解が追いつかない俺たちをよそに、何か得心が言ったかのようにリーファが呟く。タングリスニ、とはあの羊の名前だろうか――とはいえ何にせよ。その飛行能力を持った黒羊に支えられ、再びトンキーは空中に浮上していく。
「これだけ安定してるなら……」
「シノン?」
トンキーと俺たちを支えてなお空中を歩くように飛ぶ、タングリスニというらしい、巨大な黒羊の馬力に感服していると。視界の端に弓を構えているシノンの姿が映る。安定しているとは言っても比較的であって、まだ暴れ牛の上に乗っているような感覚なのだが……
「……そこっ」
シノンがソードスキルを伴って矢を放つと、寸分違わず落下していた《聖剣エクスキャリバー》に命中する。とはいえ様子がおかしく、当たった矢はキッチリとエクスキャリバーに密着していた。
そういえば聞いたことがある――当たった物体を引き寄せる、という効果を持つ弓矢のソードスキルを。その噂に違わず、放った筈の矢はみるみるうちにシノンの手に収まっていき、ついでのように《聖剣エクスキャリバー》はシノンが手に入れていた。
「あっ」
「うわっ……重っ……何よ、そんな物欲しそうな顔しなくてもあんたのものよ」
一度は諦めて投げ捨てた聖剣を前にして、キリトがどことなく間抜けな声をあげていて。シノンはどこか軽い様子で冷静に、エクスキャリバーの重さを確かめていた。
『シ、シノンさんマジかっけぇ――!』
そんな妙な声が重なるとともに、俺たちの《聖剣エクスキャリバー》を求める冒険は終わりを告げた。
――ただ、ある一つのことを除いては。
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