第百一話
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ていたからだろう。……現実逃避とも言うが。
「キャァァァ……って!?」
そんな落下死確定の俺たちを助けてくれたのは、未だ傷が癒えていないトンキーだった。トンキーは空中を素早く飛翔し、落ちていく俺たちを回収していく……が。ただでさえ負傷している上に、元来九人しか乗れないトンキーは定員オーバーだ。それでも着地くらいは出来るかもしれないが、まだ1人だけトンキーが回収出来ていない人物がいた。
「キリトくん!」
《聖剣エクスキャリバー》を引き抜きに言っていたため、遠い距離で落ちていたキリト。トンキーも定員オーバーで飛翔速度が落ち、それでも触手の先に行ったアスナがキリトの手を掴む。トンキーが触手でアスナを掴み、アスナが両腕でキリトを掴んでいたが……引っ張り上げることは出来なかった。
理由は火を見るより明らかである――キリトが抱えている《聖剣エクスキャリバー》が重すぎるのだ。アレでは筋力値の低いアスナでは、引き上げることも出来やしない。助けに行きたいところだが、この状況ではアスナのところに行くまでに、確実にキリトは落ちるだろう。
アイテムストレージにしまえば――とは思ったが、キリトがそこまで思い至らない訳もなく。恐らくエクスキャリバーはこのクエストのクリア報酬となっており、女神にスリュムを打倒したことを伝えなくては、まだキリトの物という訳ではないのだろう。つまり、スリュムの撃破の報酬として受け取った俺やクラインの武具とは違い、まだキリトの物ではない故にストレージにしまえないのだ。
「キリトくん……!」
「……くそっ、カーディナルめ!」
少し逡巡した後にアスナの呼びかけに答え、キリトが珍しく毒づきながらエクスキャリバーを放り投げる。この世で一つきりの聖剣は投げやりに飛ばされ、眼下に見える湖の方向に落下していく。
両腕が自由になったキリトはアスナの手をしっかりと掴み、ロッククライミングのように登っていく。そのままヤケクソ気味にアスナを抱えると、触手部ではなく安全な本体の部分まで帰ってきた。
「さっすがキリト、見せつけてくれるじゃない。ショウキもアレぐらい出来ない?」
「リズには帰ったらな」
「よねー……えっ、帰ったらいいの」
それはともかく、キリトも肩を落としているが無事なようで。トンキーも自由に飛翔こそ出来ないようであるが、無事に大地へ着地するくらいは出来そうだ。湖と遠ざかるトンキーの背中から、落ちていく《聖剣エクスキャリバー》を見守っていると。
「今の俺には重かったのか……何だ!?」
キリトそう呟くとともに。突如として安定していなかったトンキーが安定する。緩やかに降下していたのが嘘のように、ピッタリと空中で静止していた。
「おーい! みんなー!」
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