番外編 〜喫茶店のマスター〜
後編
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「……」
「でも、これからもここで僕と仲良くしてくれるかどうかが僕には一番問題っていうか……僕は、ここに来て北上さんと話して、こうやってピザトースト焼いてあげたりカフェオレ作ってあげたり、逆に、北上さんが僕のコーヒーにしれっと角砂糖いれてくれたり、時々気を利かせてコーヒーのオーダーをカフェオレにしてくれたり……それが出来るかどうかがよっぽど大切なことっていうか……」
「……」
「ごめんなさい。頭悪くてよくわかんないです。こんなことしか言えなくてごめんなさい。でもなんか……今の話聞いて、北上さんひょっとして仲良くしてくれなくなっちゃうんじゃないかとか、いなくなっちゃうんじゃないかとか変なこと考えちゃって」
こんな時に気の利いた一言が何も思い浮かばない自分がとても情けない。頭が混乱して自分が何を言っているのかよく分からなくて、おまけに変なこと口走りながら涙もポロポロ出てきて情けないやら恥ずかしいやら。
北上さんがページをめくる音が止まった。幻滅させてしまったんだろうか。それとも呆れられてしまったんだろうか。
「ぷっ……」
「? 北上さん?」
「なんでトモくんが謝ってるのさー?」
「へ?」
よくわからないけど、北上さんは怒ったり呆れたりとかはしてなかった。肩がわなわなと震えてたのは、どうも笑いをこらえてただけみたいだった。北上さんはマンガ本をカウンターに置いてやっと僕に顔を見せてくれた。その顔はいつもの笑顔で、ほんの少しだけ目が赤くなっていた。
「ぶふっ……トモくん」
「ふぁい」
北上さんはニコニコ笑いながら、僕にウェットティッシュを差し出してくれた。
「ほい。涙拭きなよ。ついでに鼻も」
「ふぁい……でも」
「んー?」
「ウェットティッシュで涙って拭いていいんですかね? 鼻かんでもいいんですかね……?」
「わかんないけど……いいんじゃない?」
「ふぁい……」
北上さんが差し出してくれたウェットティッシュで涙を拭いた。拭いたところがひんやりとして気持よく……でもなんだか濡れてて気持ち悪くて。でも仕方なくそのまま涙を拭いたティッシュで鼻をかんだ。
「ぐすっ……ちーん」
僕が鼻をかんだ反動で姿勢が前かがみになったとき、北上さんが立ち上がって僕の頭をくしゃくしゃしてくれた。
「……」
「びっくりさせちゃってごめんねトモくん」
「いや、僕こそごめんなさい。気の利いたこと言えなくて。せっかく真剣に話してくれたのに、こんなバカみたいなことしかいえなくて。ぐすっ」
「んーん。北上さんはね。トモくんの気持ちがうれしかったよ。ありがと」
「……」
「とりあえずさ。私がトモくんのことを拒絶することはないから」
そっか。それならよかった。僕の見える景色から、色が無くなる
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