暁 〜小説投稿サイト〜
鎮守府の床屋
番外編 〜喫茶店のマスター〜
後編
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でいいですか?」
「よろしくー」

 僕が押しが弱いのか、それとも北上さんが押しが強いのかは分からないけど……なんだかもう、ホントここの店員みたいになってきたな僕は……。

 いつの間にか準備されていた僕専用のエプロンを身に付け、カウンターに立つ。厚切りの食パンに十字の切り込みを深めにいれ、トマトソースとチーズをトッピングしたら、その上に細切りベーコンとピーマンの輪切りを乗せる。

「チーズは多めですか?」
「んー」

 トースターで焼いてるピザトーストが焦げないように注意しつつ、自分用と北上さん用にコーヒーを淹れる。同時にミルクを温めてカフェオレ用に準備しておいて、あとでコーヒーと合わせ、北上さんのカフェオレの完成だ。

――チーン!!

 ピザトーストが焼きあがった。店内にチーズの焦げたいい匂いが漂ってる。

「北上さん、出来ましたよ」
「んー」

 マンガに夢中で生返事の北上さんのそばに、ピザトーストとカフェオレを置いてあげる。今更ながらピザトーストだと漫画本が汚れるんじゃないかとちょっと心配したが……

「北上さん」
「んー?」
「ピザトーストだから、気をつけないとトマトソースで本汚れちゃいますよ?」
「よゆー」

 北上さんは器用にピザトーストを片手で切り分け、指にソースがつかないように持って口に運んでいた。

「よく片手でそんな器用なこと出来ますね……」
「まぁ汚れてもいいんだけどね。これ中古本だし」
「そうなんですか?」
「うん」

 北上さんが一つ目のピザトーストを食べているうちに、ウェットティッシュを準備してあげる。一つ目を食べ終わった北上さんは、何も言わず僕が準備したウェットティッシュを一枚取り、それで指を拭いていた。

「んー。トモくんありがと」
「いいえ」
「腕上げたね」
「そうですか?」
「うん」

 そう言われると悪い気はしないんだけど、順調にここの店員の道を歩んでいるような気がして……それはそれで別にいいけれど……でもなんだか釈然としないというか……。僕はそのままエプロンを外さず、調理に使った器材を洗うべく、シンクの蛇口をひねって水を出し、包丁をその水でゆすいだ。

「あーそうだトモくん」
「はい?」
「ハル兄さんから聞いたよ。私が下の名前を教えてくれないって気にしてるんだって?」

 不思議とそう言われると、なんだか自分が駄々をこねてるみたいでちょっと恥ずかしい……。でも北上さんは、そんな僕の葛藤を知ってか知らずか、マンガから目を離さず、僕の返事を待たずに話し始めてくれた。

「ハル兄さんからは何か聞いた?」
「いえ何も。本人に直接聞いてくれって」
「そっかー」

 北上さんの、マンガのページをめくるペースが目に見えて落ち
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