暁 〜小説投稿サイト〜
鎮守府の床屋
番外編 〜喫茶店のマスター〜
後編
[3/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
している時のハルさんは本当にカッコイイ。お子さんもさっきまでは図鑑を見ながら足をぶらぶらさせていたのに、今では食い入るようにハルさんを見ている。子供ながらに、ハルさんの気迫が分かったようだった。

「……ほい終わり。おつかれ」
「ほっ。おかげでさっぱりです。ありがとうございます」
「いいえー。こちらこそいつもありがとう」

 お子さんがソファから降りてきて、ハルさんの足元まできた。とてとてと歩く姿が可愛らしい。歩く度にアホ毛が揺れてるように見えるのは、僕の気のせいなのかな?

「トモー」
「んー?」

 お子さんが僕の顔を見てニパッと笑いながら僕の名を呼んだ。とてもカワイイ子だけどあまりハルさんには似てない感じがするから、きっとお母さん似なのだろう。髪もハルさんとはちょっと違って、茶髪でもふもふってしてるし。

「いつもありがとうだくまー」
「うん。また来るね。ありがとう」
「まってるくまー」
「待ってるから。またいつでも来てくれ」
「うん。ハルさんありがとう」

 ……あ、そういえば。ハルさんに聞きたいことがあったんだ。

「ハルさん」
「ん? どうかした?」
「北上さん、僕にファーストネーム教えてくれないんです。『下の名前教えてくれませんか?』て聞いても、『北上だよ?』としか言ってくれなくて……」
「あー……」
「何か理由でもあるんですか?」
「まぁ……ね」

 ハルさんのその反応を見て、何か重大な理由があることを僕は察した。ファーストネームを人に話せない理由って何だろうか……てか、そんな理由ってあるのかな……ひょっとして、この人たち家族ぐるみでスパイとか?! ……まさか。

「……分かった。明日にでも北上に会うといいよ。北上には俺から言っとく」
「何か秘密でもあるんですか?」
「秘密って言えば秘密なのかなぁ。本人そんなに気にしてなさそうだけど」
「?」
「ただ、北上のことを俺が話すわけにもいかないし。直接本人に聞いてみて」
「はい。ありがとうございます」

 そして次の日。いつもの時間にミア&リリーを訪れると……

「おっ。いらっしゃーい」
「こんにちは北上さん」
「うん。待ってたよー」

 北上さんがいつものように、マンガを読みながら応対してくれた。最近はなんだかんだで毎日講義が終わったらここに顔を出してるから、北上さんもこの時間に僕が来るのが分かってるのか……最近はぼくが来てもマンガから目を離そうとしない。

「早速だけどトモくん。私ちょっと小腹がすいたんだよね」
「……ここ、喫茶店ですよね?」
「うん」
「僕、客ですよね?」
「うん」
「北上さん、マスターですよね?」
「うん」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……ピザトースト
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ