暁 〜小説投稿サイト〜
鎮守府の床屋
番外編 〜喫茶店のマスター〜
後編
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は北上さんに、お店のアルバイトか何かだと思われているのだろうか……。

 隣の床屋さんにも僕は足繁く通うようになっていた。通い始めて分かったんだけど、店主のハルさんはとても腕がいいにも関わらず、代金はリーズナブルでとても通いやすい。

 ついでに言うと、ハルさんの人柄もとても温かく、話してみるととても朗らかでフランクな人だった。時々店にいる息子さんもとてもかわいらしく、ハルさんと息ぴったりな漫才を見せてくれるので楽しい。今日もお子さんは店に来ていて、ソファに座って足をぶらぶらさせながら海の図鑑を食い入るように見ていた。

「そんなわけで最近、お店のメニューほとんど作れるようになっちゃいました」
「本人から聞いてるよ。災難だね」
「僕の話が出るんですか?」
「うん。おかげでマンガに集中出来るってさ」
「そ、そうですか……」
「しかし……ぶふっ……」
「?」
「ぁあごめん。なんだか昔を思い出してさ」
「?」

 ハルさんが言うには、ハルさんが奥さんと出会った時、四六時中奥さんに振り回され続けていたそうだ。口喧嘩は当たり前で、時には腹パンされたり、誘拐(?!)されたこともあったなぁ……とケラケラ笑いながら話してくれた。

「それでなんだか昔の俺とアイツみたいだなぁって思ってさ。やっぱ姉妹なんだね」
「へぇ〜……」
「多分ね。北上はトモに甘えてるんだと思うよ」
「そうなんですか?」
「うん。北上ってさ。最初の頃はそんなに踏み込んでこなかったでしょ。気を使ってはくれるけど、一線は引いてるっていうか」
「そうですね」
「その分安心出来る相手を見つけると、すごく甘えたくなるんだろうな」

 北上さんは僕に甘えてるのか……うーん……その割には客を客だと思ってない仕打ちの数々はヒドいと思うけれど。

「ハルさんの奥さんもそんな感じだったんですか?」
「アイツは北上とはちょっと違うけど……でも俺に色々やらかしてきてたのは、きっと俺に甘えてたんだと思うな。今なら分かるよ」
「ハルさんの奥さんって、どんな人なんですか?」
「“妖怪アホ毛女”って言えばいいかなぁ……」
「?」

 毛先を整えてくれた後、今日は髭剃りもしてくれる。髪を切っているときのハルさんはとてもフランクだけど、髭剃りをしている時のハルさんはとても真剣だ。とても優しい顔つきをしているハルさんが、その時だけはとても真剣な眼差しで、話しかける隙をこちらに与えないほどの気迫を感じる。

「……」
「……」

 これは後で北上さんから聞いた話なのだが、ハルさんの奥さんはデモンストレーションでハルさんに顔剃りをしてもらった時、ハルさんのこの真剣な顔を見て、ハルさんを意識し始めたそうだ。

「……」
「……」

 でもこれなら分かる。髭剃りを
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