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木ノ葉の里の大食い少女
第一部
第三章 パステルカラーの風車が回る。
チョウジ
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よ」

 チョウジは答えなかった。忍び世界に、御伽噺の中のような英雄は存在しないけれど。でも里や仲間や一族の為に尽くし、そして全力でそれを守りきる人たちを忍びは英雄と呼ぶ。平和の為に戦い続けた人たちを、英雄と。

「あんね。あたしさ、ずっとあたしには呪いの力なんてないと思ってたんだけどねえ。でも呪えるかも。あたし呪えるかも」

 突然彼女が笑いだした。脂汗の滲んだ顔。血の流れ出し続ける足。

「慈悲を」

 歌うように呟かれた声。ヤバネの指が持ち上がり、チョウジのホルスターを指す。

「父ちゃんを刺した忍びは言ったんだよ、あれも一種の慈悲なんだって。だからあたしにも慈悲を垂れてくれたっていいでしょ? もうこんなのいや。痛いし苦しい。あたしちっちゃい頃は忍びに憧れて、四代目火影のことも英雄だと思ってたのになんでだろうねなんでだろうねなんでだろうね。いつからかわっちゃったんだろうねえ」

 狂気じみた笑顔を浮かべたヤバネが言った。

「慈悲を垂れてよ。この苦しみを終わらせて。どうせシュッケツタリョウかなんかで死ぬよあたし。忍びじゃないあたしにもわかるよ、血が流れすぎたら死ぬってくらいさあ」
「そんなことないよ。今すぐ病院に連れていけば――」
「は? 勘違いしてないあんた。あたしのこれはね、復讐なんだ。敬愛する火影のこと一般人にこうやって罵られたのはじめてでしょ? 殺せって言われるのはじめてでしょ? 多分あんたは誰も殺したことないんでしょ? でも何れ殺すことになるよ。それが遅いか早いかの違いだ」

 息を吸って、冷たい赤い瞳の彼女は続けた。

「あたしはあんたにあたしを病院に連れて行かせて、人一人救えたなんて自分勝手な満足感に浸らせるつもりはない。――殺して、今すぐ。あたしはあんたの記憶にあたしのことを永遠に焼きつかせるの。森の中で足を怪我して、あんたの敬愛する火影を罵倒した女が慈悲を垂れろと言ったことを永遠に覚えていさせるの。自分たちばかりかわいそうと思って仲間の悲鳴ばかり聞いてるんじゃない。あたしたち一般人の悲鳴を聞け。巻き込まれる罪のない人たちの悲鳴を聞け。そして焼き付けろ、永遠に」

 それがあんたたちがあたしに出来る唯一の償いで唯一の救いだ。
 はき捨てられた少女の言葉にチョウジは何も返すことが出来ず。泣き出しながら、それでもクナイの刃を押し込んだ。彼女はどの道死ぬだろう。そして例え生き残ったとしても、この足では普通に暮らせまい。そして生き残ったとしても彼女は忍世界を呪いながら生きることしか出来ないのだ。
 ねじ込まれたクナイの刃が彼女の息の根を止める一瞬前、ヤバネが笑った。
 事切れた少女の首がかくんと揺れて、そして動かなくなった。
 チョウジはしばしの間、そこに蹲って泣いた。彼女が火影を罵倒した
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