巻ノ三十四 十勇士その四
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「勇士、その勇士が十人であるからな」
「十人だからこそ」
「それで、ですか」
「そうじゃ、十勇士としよう」
こう名付けたのだった。
「真田十勇士じゃ」
「それが我等のですか」
「その名ですか」
「そして源四郎の家臣として常に共にいよ」
こうも命じたのだった。
「よいな」
「それもですか」
「我等への褒美ですか」
「うむ、御主達は他の誰の家臣でもない」
まさにというのだ。
「源四郎の家臣として生きよ」
「何があっても離れず」
「そのうえで」
「既に義兄弟であるが」
それと共にというのだ。
「生きるも死ぬも共にせよ」
「わかりました」
「有り難き褒美です」
「では我等これより十勇士と名乗り」
「源四郎様と共に生き死にまする」
十勇士達も誓う、こうしてだった。
十人は昌幸にその名を与えられ幸村の家臣としてのお墨付きも貰った。そしてそれぞれ昌幸自筆の感状も貰いだった。
それを大事に収めた、その論功の後で。
幸村の屋敷においてだ、主と共に酒を飲みつつ楽しく話したのだった。
「いや、これ以上の褒美はないぞ」
「十勇士か、よい名じゃ」
「しかもずっと殿と共にいてよいとは」
「また何というよきこと」
「ではこれからもな」
「務めに励もうぞ」
「うむ、確かによきこと」
幸村自身も彼等に応えて微笑んで言う。
「御主達によき名が授けられたことはな」
「はい、では我等真田十勇士」
「これからの殿の家臣です」
「常に殿と共にありますので」
「これからも宜しくお願いします」
「拙者の方もな。それでじゃが」
幸村は杯を手にしたまま彼等に言った、その言ったことはというと。
「拙者は四千石となった」
「石高が倍になりましたな」
「これもよきことですな」
「うむ、それで屋敷もじゃ」
今住んでいるこの屋敷もというのだ。
「移ることになった」
「四千石に相応しい」
「そうした屋敷にですか」
「この屋敷は家臣の一人の者となり」
そしてというのだ。
「我等はその屋敷に移ることになろう、しかし」
「しかし?」
「しかしとは」
「その前に我等は国を出ることになる」
幸村はその目をやや鋭くさせて述べた。
「おそらくだがな」
「?それは一体」
「どうしてでしょうか」
「また旅に出られるのですか」
「それとも戦に」
「どちらでもない」
旅でも戦でもないというのだ。
「他の家に人質として入ることになる」
「と、いいますと」
霧隠がそう言われてすぐに言った。
「徳川家か上杉家か」
「わかるか」
「おおよそですが」
「羽柴家は置いておきまして」
筧も言う。
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