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真田十勇士
巻ノ三十四 十勇士その一

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                 巻ノ三十四  十勇士
 鳥居元忠率いる徳川家の軍勢を破り上田から追い出した真田の軍勢は意気揚々として城に戻った。そしてその夜は。
 昌幸の言葉通り無礼講の宴だった、皆共に酒を飲み肴を食った。
 昌幸は大盃を手にしてだ、酒を一杯飲み干してから言った。
「うむ、やはりな」
「酒は勝った時のものがですな」
「一番ですな」
「長篠で兄上がお二人とも倒れられ」
 ここでだ、彼は家臣達に真田家のことを話した。
「それから武田家は大きく傾いてな」
「そしてでしたな」
「それから苦しい戦が続き」
「この様な勝ちはです」
「とんとなかったですな」
「そうじゃった、しかしこの度は勝ってじゃ」
 そしてと言うのだった。
「家も領地も守りな」
「真田家侮れずとですな」
「天下に知らしめた」
「そのことも大きいですな」
「実に」
「我等は確かに小さい」
 主の幸村自身も言う。
「十万石、しかしな」
「十万石でもですな」
「侮れぬと天下に知らしめましたな」
「この度の勝ちで」
「鳥居殿も見事であったが」
 ひいては彼が率いる徳川の兵達もだ、実際に戦ってみてその強さを実感した。
「しかしその徳川の軍勢を打ち破った」
「そのことがですな」
「非常に大きいですな」
「実に」
「これで以後この上田に迂闊に攻め入る者はおらぬ」
 このことを確信している言葉だった。
「そのことも祝おうぞ」
「そして明日はですな」
「この度の戦のことで」
「論功行賞ですな」
「それじゃ」
 昌幸は家臣達にすぐに答えた。
「そのことも楽しみにしておれ」
「はい、さすれば」
「明日も」
「とはいっても我等に領地はあまりなく」
 その論功についてもだ、昌幸は話した。
「この度は攻めた戦ではなくな」
「領地もですな」
「手に入れていませぬな」
「だから領地を分けることはあまり出来ぬしな」
 それにというのだった。
「銭もあまりない、しかしじゃ」
「功を挙げた者には報いる」
「しかとですな」
「それは忘れぬ、御主達にもじゃ」
 今話している彼等にもというのだ。
「褒美を出すからな」
「有り難きお言葉」
「さすれば明日も楽しみにしております」
 武士もただ主に忠義を誓っているのではない、やはり領地や銭といった褒美が必要だ。昌幸はそのこともわかっていた。
 だから論功のことも頭に入れていた、しかし今は勝ちを喜び飲んでいた。
 それは信之、幸村も同じでだ。彼等も飲んでいた。
 その場でだ、信之は酒を楽しみつつ弟に言った。
「この度御主もな」
「働いたと」
「よくやってくれた」 
 その功をねぎらうのだった。
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