圏内事件 ー真相ー
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
る。いまだ体調が全快しない俺を気づかってなのか、ゆっくりと宿屋まで戻っていく。
途中、ヨルコさんが消滅した路傍でカインズ氏を殺したショートスピアと同じ意匠が施されたダガーを回収し、俺たちは宿屋へと入った。
ガチャンと扉の解錠音を聴きつつ、中へと入や否や紅い影が抜剣していたアスナの後方から飛び出して来る。
「ーーーっ!ユーリッ!」
「おっとと……」
胸元に飛び込んでくるシィをよろけつつも、なんとか受け止める。視線を下へと向けると涙で潤ませた瞳とぶつかった。
「……ごめん」
「バカ……心配したんだからねっ」
チクリと胸を刺すような罪悪感に苛まれ、謝ると落ち着いた声音で怒られた。現在進行形で、胸に擦り寄ってくる少女の頭を撫でていると、不意に名前を呼ばれた。
「ユーリ君。君たちいつまでそうしてるつもり?」
「……あっ」
額に筋を一本浮かべたアスナがこちらを睨んでいた。どう見ても怒っている。部屋の奥には、罰の悪そうな表情を浮かべたキリトと明らかに怯えた様子のシュミットが居た。少しの間、慰めていたつもりがけっこう時間が経っていたらしい。
「はい、これ。君たちが預かってて。私とキリト君でシュミットさんを送ってから張り込みます。体調悪い人はさっさと帰ってて。攻略に支障が出ても困るから。あとでシュミットさんから聞いた事、メールで送ります。何かわかったことがあったら、連絡してください」
「は、はい……」
去り際に凶器であるショートスピアとダガーを手渡され、淡々と捲したてるように言付けると男二人を引き連れ、さっさと行ってしまう。
「……なんか、悪いことしたね」
「そーだな」
自宅待機を命じられた俺はなんだか居た堪れない気持ちになりつつ、相方と顔を見合わせる。肩をすくめると、帰宅するべく転移門へと歩いて行った。
◆◇◆
よほど酷使したのか家に着くなり、ソファに倒れこむようにして寝てしまった相方を眺めて、息を吐き出す。キリトと共に部屋を飛び出し、殺人者を追いかけて行った時はさすがの私も肝が冷えた。アスナがキリトに対し、激怒する気持ちも分かる。
「……まったく、心配したんだからね」
「………………んっ」
横になって眠っているユーリの横へと腰掛けると、さっき私がされたみたいに髪を梳く感じで頭を撫でる。指の間を通るサラサラの髪が気持ちいい。ついでとばかりに綺麗な銀色の毛並みを持った犬耳を優しく撫でる。寝ているはずのユーリの体がピクリと強張り、ふにゃりと脱力する。心地よいらしい。
「はぁ……びっくりした。さて、……どうしてやろうか」
一瞬起きたかと思って冷っとしたが、安らかな寝息を立てているところを見るによく眠っていると分かる。今まで自
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ