圏内事件 ー真相ー
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てローブを襲う。しかし、相手へと届く前に紫に発光するシステム障壁に阻まれる。
悠然とした動作で、結晶を掲げるローブをじっと見据える。頭の上から伸びた耳を立たせると、ピンッと直立させたソレへと意識を集中させる。
ボイスコマンドさえ聴き取れれば、結晶で追跡する事ができる。
スキル《人狼》と《聞き耳》スキル、さらに派生スキル《広域聴覚》による二重、三重の聴覚強化によって、多少離れた位置にいる物音くらい問題なく聴き取れる。
しかし、目論見はまたしても裏切られる。今、この瞬間、マーテンの街全体に午後五時を告げる大ボリュームの鐘の音が響き渡ったのだ。
鐘の音色は肝心のボイスコマンドを塗りつぶす。殺人者が青いエフェクト光に包まれ、転移していく中、顔を苦痛に歪めた。
だが、その理由は追跡の手段を失ったからではない。
通常の何倍にも強化された聴覚は日常でも長時間使用すれば頭痛がするのに今回は一度に膨大な量の音情報を受け取ってしまった。脳が処理しきれずに負担がかかり、激しい鈍痛という形となってユーリ自身を襲っているのだ。
「……ぐぅ」
激しい頭痛で視界が揺れる中、急斜面を走れるわけがなく足を踏み外し、切妻型の屋根を転げていく。
咄嗟に瓦に指をかけようとするも、頭が割れるような痛みのせいでうまく力が入らない。ゴロゴロと屋根を下っていく中、ぼんやりと「今日はよく斜面を転がるな」と考えていた。屋根から投げ出され、一瞬の浮遊感の後、体全体に重力がかかる。
(地面に激突したって、死ぬわけじゃないし。クソ痛いけど……)
「ユーリッ!」
半ば諦めていた時、痛みのせいか涙で霞んだ視界の中を黒い影が通り過ぎ、直後体へとかかっていた重力が消えた。不思議に思い、首を後ろに回せば見慣れた女顔が映った。同時に自分が置かれている状況に思考が追いついた。
「ーーーっ!??」
両の腕で横抱きにされた状態ーー所為、お姫様だっこーーに加え、周りには街を行き交う人、人、人。奇異なモノをみる視線を敏感に感じとり、カッと耳まで熱くなるのがわかる。
「わ、コラっ!あんま暴れんな!」
「離せ!降ろせ!変態!」
「おまっ、危ねっ!ぜってー大丈夫じゃないだろ」
しつこく残り続ける痛みのせいでうまく力の入らない体を動かし、抵抗を試みる。だが、キリトの筋力値が高いのかなかなか逃げられない。悲しいかな、なんとなく戯れたペット扱いされてる気がしないでもない。
ようやく地面に降ろされた頃には、頭痛はだいぶ治まっていたがまだ、頭の奥の方がズキズキとする。
「……おまえ、後で覚えろよ」
「洒落にならねぇよ……」
半目で睨みをつけると、キリトは降参の意を示すように両手を上げて見せ
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