暁 〜小説投稿サイト〜
龍が如く‐未来想う者たち‐
秋山 駿
第三章 手駒と策略
第五話 交渉
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「お待ちしてました、秋山さん。話は聞いてます。おかけください」


流石に礼儀はなっているようで、宮藤の第一声でキレることはなかった。
だがその飄々とした見た目で隠しているのか、本当の顔が見えてこない。
促されるままソファーに座り、向かい合うように宮藤が座る。

少しの沈黙。
それはまるで、互いに腹の探り合いをしている様だった。


「スカイファイナンスの秋山です。折り入ってお話が」
「あぁ、この近くにある金貸しの店、あれ秋山さんのお店だったんですね。でもウチ、今金に困ってなくて……」
「桐生一馬……今そちらにいると聞いたのですが?」


その言葉をぶった斬るように、遮って秋山が言葉を続けた。
なるべく刺激しないよう遠回しに、だが確信をつくような言葉を選ぶ。
これはただの交渉じゃない。
下手うてば命まで取られかねない。

宮藤の目付きが、少し変わる。
だが口元は、相変わらず笑っていた。


「どこで、その情報を?」
「小耳に挟んだだけです」


ふぅんと軽く言葉を漏らす。
余裕なのか焦っているのか、変わらぬ表情から読み取ることが出来なかった。


「失礼だとは存じてますが……取引致しませんか?」
「取引……ですか?」
「えぇ、こちらには桐生さんが必要です。用意できる物は何でも用意致しますから、桐生さんを渡していただけないでしょうか?」


また、宮藤の目付きが変わった。
さっきとは違い、チャンスと言わんばかりの目。
食いついてくるだろうと出した案は、正解だったようだ。
だがその次の言葉までは、予想出来なかった。


「お帰り下さい」
「えっ……?」
「そんな簡単な案で、4代目を取り戻せるとでも?金で用意出来るもので返してくれると思ったら大間違いだ」


一瞬の気の緩みを読まれたのか、宮藤は怒りに満ちていた。
そんな軽い手段で堕ちる男じゃないと言いたげな剣幕に、思わず圧倒される。
想像してた宮藤より、よっぽど恐ろしい。


「麻田には、店の前で待たせてます。すみませんがお帰り下さい」
「……そうですね、今日の所は帰ります」


騒ぎは起こしたくない。
今宮藤に食ってかかれば、もしかしたら桐生の居場所を二度と知る事は無くなってしまうかもしれない。
それだけは避けたくて、秋山は諦めて席を立った。
今宮藤の元にいるのなら、桐生は生きている。
そう信じるしかなかった。


「あぁ、秋山さん」


部屋を出ようとした秋山を、宮藤が呼び止める。


「6代目……堂島大吾を渡してくれるなら、考えなくもないですよ?」


満面の笑みは、逆に恐怖を与えた。
やはり狙いは、堂島大吾。
そして奴は、大吾と共にいる事を知っている。

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