秋山 駿
第三章 手駒と策略
第三話 動きだした男
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ぼんやりした意識の中、誰かの声が聞こえる。
必死に社長と呼ぶその声は、姿は見ずとも花ちゃんだとすぐにわかった。
だが現れた姿は、何時もの見知った花ちゃんじゃない。
その身体には、痛々しく残るアザや撃ち抜かれた傷が刻まれていた。
「しゃ、社長……」
秋山に向かい手を伸ばす花ちゃんの背後に、拳銃を持った足立が現れる。
助けに行かなきゃ……。
そう思うが、腕は伸ばせても足が動かなかった。
薄気味悪い笑みを浮かべた足立が、銃口を花ちゃんに向ける。
「やめろぉぉぉっ!!」
そこで秋山は、ベッドから飛び起きた。
止まらない汗を拭いながら周りを見るが、そこに花ちゃんも足立もいるはずがない。
何故こんな夢を見たのだろう?
そこまで精神的に追い込まれているというのか。
自分の手じゃ、誰も守れないという事の暗示なのか。
「お目覚めか、秋山」
いつの間にか入口に、伊達が立っていた。
タバコをふかし、相変わらずの笑顔で秋山の近くに座る。
「ここは、何処ですか?」
「警視庁にある救護室だ。あれから半日眠ってたぜ」
「半日……」
時計を見れば、針は4時を指している。
眩しい陽を見る限り、夕方である事は間違いなかった。
「あれから、どうなったんですか?」
「大吾は、目が覚めた麻田を迎えに行った。花ちゃんは、無事家に送られたそうだ。後で遥も交えて、作戦会議でもしようかと思ってな」
「作戦会議、ですか。ということは、何かわかったんですね」
「あぁ、桐生の居場所がわかった」
それは、予想以上の言葉だった。
てっきり喜瀬や足立の情報だと軽く見ていたのに、飛んできたのは1番知りたかった情報だからだ。
はやる気持ちを抑え、平静を保とうとする。
「1時間後、この向かいの部屋に集合だ。それまでゆっくりしてろ」
「あ、ありがとうございます」
伊達はタバコの火を消し、救護室を後にした。
だが休む間も無く、別の客人が訪れる。
気怠そうにしながらも入ってきたのは、谷村だった。
「お疲れ様です、秋山さん」
「谷村さん……」
「足の怪我、浅くてよかったですね。秋山さんの武器を失わずに済んで、少し安心しましたよ」
確かに、足から痛みは消えていた。
軽く動かしても、どこにも違和感は無い。
適切な治療のお陰だとわかり、谷村に深々と頭を下げる。
「よしてください。俺が治療した訳じゃないんですから」
「それでも、警察に助けられた。それに対して、礼をする義理はあります」
谷村は、調子狂うなと言わんばかりの顔を見せる。
だが直後に見せた顔は、いつもの飄々とした顔とはうって変わって、いつになく真面目で真剣な顔だ
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