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ONE PIECE《エピソードオブ・アンカー》
episode17
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。彼ら魚人が住まう家のような物だ。アンカーはその建物の奥に移され、小さな天窓から射し込む太陽や月明かりが唯一の灯りとなった。
 アンカーの部屋には誰かしらいた。船医はもちろん、近くに来た他の海賊達を返り討ちにして帰って来た仲間や、これからソレに出掛ける仲間。特に、アーロンは多くの時間をアンカーと過ごした。

 時折起こる発作には皆が固唾を呑んだ。船医が付きっきりで看病するが、止まらない時は2日間も胸の痛みに苦しんだ。もう死んでしまうのではないか?と誰もが思ったが、誰もその事を声に出したりはしなかった。その間、当事者であるアンカーから「助けて」や「苦しい」などの声は全くなかった。
 しかし、忘れた頃にもう一つの発作が顔を出した。この時ばかりは火がついたように暴れ、呪いの呪文のように「ごめんなさい」と繰り返す。普段は決して言わない「助けて」を必死に叫び求めた。──が、船医はおろか船員達でさえ敵に見えてしまうアンカーに手出し出来る者は
たった1人だけ。アーロンの腕に抱かれ、死んだように眠るまで、アンカーは泣き叫び続けた。

 ──もう、限界かもなぁ......。
 と、まるで他人事のように、アンカーは呟くようになった。

「アーロン。外に行きたい」
「分かった」

 太陽の光が少ない曇りの日は、よく外に出て鉛色の空とくすんだ青色の海を眺めた。「僕の体、軽くてよかっただろ?」と微笑むアンカーに適当な返事を返す。元々小さな体だが、日に日に痩せ細って行く姿を直視出来なかった、というのが正直なところだ。

「アーロン」
「ん?」
「僕が死んだら......」

 最初は「何を馬鹿な事を!」とよく怒鳴っていたものだが、腕の中の軽さと真っ直ぐ見つめてくる目に薄らと膜が張る液体に気付き、冗談ではないのだとアーロンは悟った。それからは、海を眺めては「僕が死んだら」と切り出すアンカーの話を聞き入れるようになった。






 ギィ......

「誰?」

 ドアをノックもせずに開いたのは誰だろう? 特に深く考えずに声をかけると、小さく短い悲鳴が聞こえた。アンカーがもう一度訊ねると、怯えたような震える声で「オバケ?」と返事が返ってきた。

「まだ、生きてるよ」
「じゃあ、誰?」
「僕はアンカー」

 天窓に射し込む月明かりに照らされた人間の少女に向かって、アンカーは自身でも驚くくらい優しく声をかけた。人間を見ただけで吐き気を催すというのに、その人間の少女にはそれを感じなかった。
 こんな所までどうしたの?と訊ねれば、少女は俯いたまま服の端を持って弄っていた。

「道に迷ったの?」
「......うん」

 その少女はナミと名乗った。腕に彫られた刺青はアーロン一味の証。少し前に聞いた“海図の天才”と
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