番外編 〜夜戦トーナメント〜
決勝戦・ラストバトル
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突っつかれるというのは意外と嫌なものだ。現にマイスイートハニー隼鷹も、俺が腹をちょんってつっついたら変な声を出す」
「なるほど」
めっちゃ男前な顔でろくろを回す手つきをしながら余計なことを口走った提督さんは、突如シラフに戻った隼鷹に連れて行かれた。その後やぐらの裏から『余計なことを何度も口走るのはこの口かッ……!!』『ひゅいまひぇんひゅんひょうひゃん……ひゅいまひぇん……!!』という慟哭が聞こえてきたので、提督さんは隼鷹に血祭りにあげられているようだ。俺しーらないっと。
「クマァアッ!!」
「ふんっ?!」
「もう一度照明弾を撃つクマッ!」
「させないッ!!」
球磨の最後の反撃か? ここに来て球磨の雄叫びが聞こえたが……
「探照灯照射!!」
「ヴォオオオオ?!!」
やはりガチ夜戦となると川内に一日の長あり。とっさに探照灯を球磨に浴びせて相手の視界を潰した後……
「これで決めるッ……!」「このまま……!」
「突撃ッ!!」「撃つクマァアアア!!」
『ズドーン!!』という一発の単装砲の音が周囲に鳴り響いた。
『ストップ!!』
果たして……勝者はどっちだ……照明が点き、演習場が明るく照らしだされた。
『球磨姉が大破判定を受けたので、勝者はせんだーい!!』
演習場で最後まで立っていたのは、肩で息をし、魚雷を逆手で構えている川内だった。何この子。試合前と違ってめっちゃ凛々しくてカッコイイんですけど。
一方、球磨の姿はなかったが、代わりにショートパンツを履いた下半身が海面から突き出て痙攣していた。なんだか出来の悪いスケキヨみたいに見える。あのスケキヨがきっと球磨なのだろう。
「ハルー。職業調査の時も言ってたけど、スケキヨってなに?」
「今度金田一耕助でもみよっか暁ちゃん」
川内は息も絶え絶えでスケキヨの元へ行き、そのスケキヨを海面から引っ張りだした。
「球磨……さすが軽巡のオーパーツだね……どっちが勝ってもおかしくない試合だったよ」
「ぐ、ぐやじいグマァ……でも、さすが川内クマ。夜戦じゃ勝てないクマ……」
「んーん……私もヤバかった……」
途中はなんとも締まらない試合だったけど、最後はお互いの健闘をたたえ合って終了。みんなからは惜しみない拍手が沸き起こる。
二人共お疲れ様。素晴らしい試合をありがとう。そして今回のトーナメントの出場者のみんなもお疲れ様。みんなの戦いは素晴らしかった。たとえ動機は不純だったとしても。
……そして川内。お前のおかげで、俺は球磨型軽巡洋艦にならなくて済んだ。心から礼を言う。ありがとう川内。……ありがとう。
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