第12話 高レベルのジレンマ
[6/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
」
「コーヒー一杯無駄にした点では、立派なヘマよ」
御坂が一口流し込みながら言う。
「あわわ、新しいのにしますか?」
「いらん」
初春にマグカップを渡して、サソリは軽くできる範囲で伸びをした。
贅沢をいえば水で口の中を洗いたい気分だが、この身体では無理だろう。
静かに舌を使って舐めとって喉の奥へと流し込む。
「そういえば、サソリさんはどうして眼に包帯を巻いているんですか?目にもケガしたんですか?」
マグカップの中に砂糖が固形のまま沈んでいる滅多に見ないコーヒーの哀れな姿を上から覗き込みながら初春がおずおず聞いてみる。
ときおり縫い目から紅い燐光が漏れる。
「これか……写輪眼ってヤツだな」
「なんか直接見ると危ないみたいよ」
「へえ」
「この眼を使って……あっ!ということは違うな」
サソリは何かを思い出したかのように頭をもたげた。
何が?
「一から考えなおすか」
「どうしたの?」
「お前らに前話したヤツだ。簡単に実力が上がるってので」
前に話した?
「お前があの木山とか云う女の時に話そうとしたヤツだ」
サソリは少しイラつきながら言った。
あっ!!たしか一つだけ気になるようなことを言っていたのを御坂と白井が思い出した。
「あたしが肘鉄を喰らったやつね」
思い出したかのようにコーヒー片手に脇腹をさする。
「それで?」
「んー、簡単に云えば『強くなったように錯覚させる』ことだな。幻を見せられて自分は強くなったと思い込ませる術もあるし」
サソリは幻術について説明を加えた。
「強くなったように錯覚……?」
御坂が考える素振りを見せた。
「そうだ、要は五感に働き掛けて幻を見せるという技術。忍や戦闘を生業とする者たちに共通するのは、自分の被害を最小限にして相手を圧倒したいという願望だ」
全ての生物とは言えないが
戦闘において自分の傷を少なくして、圧倒的に勝ちたいと考えるものは多い。
苦しい訓練や辛い制限を設けた生活など
そのときにおいて最も大きなモチベーション維持は、試合になったときに相手よりも強くなり、余裕で勝ちを得ることである。
自分の鍛えた肉体や術で相手を圧倒する
凄まじい力の差で相手を自由にいたぶること
それが人間をはじめ、全ての生き物には元来備わっている戦闘本能だ。
戦闘では負けるよりも勝つ方が良い。
「なんかゲームみたいですね。好きなように動かすって」
サソリのマグカップを流しに置いてきた初春がお茶菓子を出してデスクの上で広げながら呟くように言った。
「あっ!そうそうそれに近いかも」
格闘ゲームでいきなりレベルMAXの相手をするよりもレベル最低の相手と戦闘して自分が強くなったと思い込む。
ゲーム好きなら一度はやったことがある遊びだろう。
ほとんど攻撃も防御もしない相
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ