第12話 高レベルのジレンマ
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傷口に塗り込んでいく。
「日に日に生傷が増えていきますね」
「仕方ないですわ」
白井はぶっきらぼうに応えた。
そう、自分は風紀委員(ジャッジメント)だ。
他の一般学生が逃げていく中でたった一人でも危険な場所へと向かわなければならない使命を帯びた治安維持組織。
女性だからといって、安全な職務に回されることは滅多になく、むしろ数少ない高位能力者である白井は普通のジャッジメントよりも職務の遂行レベルは必然と高い場所に回される頻度が多い。
そのため、高位能力者だから男性よりも強いという図式が定着してしまい、今では心配してくれるのが初春や御坂等、限られた人だけとなる。
白井は心配してほしいとは思っていないように振る舞った。
仕方がないと自分の中で諦めている節があった。
でも、白井も多感な年ごろである。
任務とはいえ、危険な場所に向かわなければならないことに不安になったり、落ち込んだりもする。
誰かに気に掛けてもらいたいと考えてもいる。
他の学生の安否よりも真っ先に自分のことを心配してくれる存在がいてくれたらと考えることもあった。
そこにポッと現れた謎の赤髪少年により白井の強固でヒビだらけの覚悟に甘えが生じた。
自分の身を案じて、助けに現れた「サソリ」のぶっきらぼうな心配にすらホッとした自分がいた。
「もっと自分の身体を大事にしろ」
サソリ自身は、白井とは比べものにならない程の血だらけの身体を引きずっているのに、心配するのは白井のことばかり。
そのことを思い出すたびに顔の発火点が下がったように熱くなった。
今まで会って来た、情けなく意気地がない男よりもクールでかっこいい女性の御坂のことを愛して、一途に想い慕って来た。
それが今回の一件で大きく変わってしまった。
「それにしてもサソリさんって凄いですよね。白井さんを助けに来てくれたなんて」
「ふ、ふん……そそ、そんなことありませんわよ」
白井は顔を伏せて精一杯の強がりを見せる。
あんな子供に私がトキメクなんてことなんて自分の今までのプライドが許さない。
場が悪そうに奥歯を噛みしめた。
白井は、辺りを見渡し部屋に初春しかこのいないことを確認すると、今まで巻いていた包帯を脱ぎだして新しい包帯を巻いてもらうために腕を上げて初春に身を任せた。
未だに蒼くなったアザが痛々しく残っている。
顔を軽く叩くと白井は自分の使命を確認するようにこれからのことを口に出した。
「これからするべきことは……」
レベルアッパー事件収束に向けて
レベルアッパーの使用者による犯罪への能力の悪用の恐れ
情報の一般への開示の停止
使用者が軒並み意識不明になることが知られれば、自暴自棄になり暴れだす者がいるかもしれない
そこから優先すべき課題は。
1. レベルアッパー
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