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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 5
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んと伝えておきます」
 「感謝する」
 (……ウソでしょ……!?)
 国境警備隊の増員。しかも、村の人達への事前報告付き。同時に村の守りも堅固になって……これでは、不穏な動きを感じ取った村人達は絶対山に近付かない。
 双方で暗黙の了解がある以上、アルスエルナの領土内であっても、バーデルの国境警備隊の目が届く範囲に居る人間は無条件で不審者にされてしまう。例え任務妨害を名目に拘束されても文句は言えない。
 ミートリッテなら村の人間に確認を取れば即時解放されるだろうが、どうしてこんな時(しかも深夜)に山へ入ったのかとハウィス達に問い詰められるのは必至。内容が内容だけに、適当な誤魔化しは一切通用しない。
 バーデル軍人の追跡だけでなく両国の協力態勢が本格化したら、ただでさえ一本しかない道が内外から極端に狭められてしまう。
 「警備隊には許可を得た直後から其方の領土内でも活動を開始させます。そのつもりでお願いします」
 「危険分子を排除する戦力として期待させていただきますよ。では、村長様の家へご案内します。諸々の手続きは其処で」
 団員の片割れが四人を連れて村の中へと移動を始めた。隠れた人影に気付きもせず、その脇を無言でぞろぞろと歩いて行く。
 無骨な背中を見送ったミートリッテは、額に左手のひらを当てて目蓋を閉じ、溜めた息を盛大に吐き捨てて、混乱しかけた思考を必死で回転させる。
 まだ、だ。
 現状はまだ、海賊に脅迫された時点と大差無い。
 警備隊を増員「させたい」のなら、実行は村長と話をつけて以降。軍人達がバーデルに帰国した後、必要な準備を済ませてからだ。向こうが準備済みだったとしても、自警団側は安全上村人達への周知を優先させたいだろうから……展開は恐らく、最速で明日の午後一辺り。それまでに大きな変化は無い。と、思いたい。
 逆を言えば、明日の午後以降は確実に妨害者が倍増すると覚悟しておくべきだ。両組織員の配置次第では、教会への坂そのものが完全に塞がれる。
 が、それまでの間なら、まだ余裕はある。
 (二択ないし三択……か)
 二国の準備がきっちり整う前。今日にも盗み出し、五日間指輪を隠し持って追い込まれる危険を冒すか。
 或いは、受け渡し日時ギリギリに強固な囲いを突破するか。
 若しくは全く別の手段か。
 いずれにせよ待っているのは
 (神父に村人(主に女)に軍人に国境警備隊に自警団……って、どんだけ難易度上げてくれてんのよ、アイツらは! 気持ち悪い猫撫で声で強要しといて、自分達の追手も撒けてないなんてッ! 真性のアホじゃないの!?)
 いや待て。
 もしかして、追手に気付いてたから本人達は鳴りを潜めてシャムロックに『依頼』したんじゃないのか? 借りやら女衆やらは全然関係無くて、軍人に見付かると面倒だから。
 (……
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