ブルボン 再び 〜小さいおじさんシリーズ2
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あらぬ方向に走り出した。
「おい逃げたぞ!?」
「ふむ……」
羽扇を傍らに置き、白頭巾は立ち上がった。
「南蛮制圧の際、彼を降伏させる為に7回捕らえ、7回放ったのです。それ以降、彼に何か頼みごとをする際は7回キャッチアンドリリースを繰り返すのが、決まり事になってしまいましてね。…どれ」
白頭巾はありえない速さで孟獲の前に回りこむと、じたばたと暴れる孟獲を押さえ込み始めた。
「どうどう、どうどう…」
「それまじで7回繰り返すのか!?」
「えぇい止めんか鬱陶しい!!茶が冷める!!!」
豪勢が叫んだ。白頭巾が手を緩めると、孟獲は再びどすどすと走り始めた。
「ご苦労。帰っていいですよ」
孟獲はそのまま、引き戸の隙間に逃げ帰っていった。…何しに来たんだ、あいつは。
「おい、いい加減にしろよ卿!いつになったらルマンドは切れるのだ!」
「あぁー、さすがにもう茶が冷める。次、切れなかったら今日の茶菓子はプチにするぞ」
「仕方がありませんね。呼びましょうか」
ぱん、と一つ手を叩くと、再びすらりと引き戸が開き、堂々たる巨躯の偉丈夫が現れた。縮れた黒髪に挿す簪は、何かの花を象っているようだが、よく見えない。浅黒い肌に、何故か唇の紅さが異様に映える。
「む?…むむむ…」
豪勢の目に、レアポケモンを見つけた少年のような輝きが宿った。白頭巾は、何も云わずにルマンドを指差した。偉丈夫はこくりと頷き、剣を腰溜めにして身構える。一瞬、剣が消えたように見えた。白い閃光が現れて消えたかと思うと、ことり、と僅かな音がして、3つに分かれたルマンドが転がった。…塵一つ、散っていない。
「全く散らかっていない……なんという豪傑か!!」
「さ、茶にしましょうか」
「ちょっと待て、紹介くらいしろよ!!」
豪勢が勢いよく立ち上がった。
「貴様、この御仁は誰だ!さぞかし名のある武将とお見受けするが…」
白頭巾が、にこりと笑った。
「あ、妻です」
「なに――――!!」
2人が同時に叫んだ。俺も心の中で叫んだ。うわ、よく見るとあの服花柄だし、あの口の赤いのは口紅だ。
「あ、あわわわ、余はなんという失礼を…!!」
「そうだぞ卿!いやしくも一国の丞相の妻を武将呼ばわりとか!!」
「貴様とて『なんという豪傑か!』とか口走っていただろう!!」
「ぐぬぬ」
揉めている二人を一瞬ぎろりと睨み、白頭巾の妻は深く一礼して引き戸の隙間に消えていった。
(…ああは云ったが、すごいな、奴のヨメ)
ルマンドを齧りながら、端正の隣で豪勢がぼそりと呟いた。
(不美人だとは、余も聞き及んでいたが…あれもう性的嗜好が疑わしいレベルだな)
(よさぬか、卿。仮にもご婦人に)
豪勢をたしなめ、端正が茶をすする。…一息つくと、ぼそりと呟いた。
(…桃園の
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