ブルボン 再び 〜小さいおじさんシリーズ2
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た。勿体無いからプチにすりゃいいのに、などと呟きながら。馬謖と呼ばれた青年は、曇りのない瞳をきらきらさせながら白頭巾の元へ、子犬のように駆け寄った。
「このルマンドを切り分ければいいのですね!なるほどなるほど。これはまた、崩れやすそうな菓子ですな。聞いたところ丞相のご友人は、散らかるのがとても嫌いなお方。なれば最適な策は…」
馬謖が、真顔でルマンドを見つめて呟いた。
「――袋に入れたまま、切り分けてご覧に入れましょう」
自信満々に言い放ち、馬謖はすらりと剣を抜いた。そして大上段からルマンドに向かって振り下ろす。
「いぃやあっ!!」
ばりん。ルマンドは袋の中でばらっばらに砕けた。
「そ、そんな!ほぼ縦方向にしか砕けないなんて!」
「こりゃもう…ルマンドチップスだな」
豪勢が笑いを堪えて呟く。馬謖の肩がびくっと震えた。
「わ、私は無能じゃない!!こんな…この!この!!」
パニック状態になった馬謖は幾度も剣を振り下ろす。振り下ろすたびにルマンドは袋の中で粉々になっていく。…いたなぁ、こういう同級生。小学校高学年あたりで。
で、馬謖がへとへとになって倒れこんだあたりで、白頭巾がすくっと立ち上がり、ルマンドの袋を持ち上げた。袋はくたりと中から折れて、具の足りない抱き枕のように撓んだ。
「丞相!…わ、私はその…」
「ありがとう。…今日はもう帰っていいですよ」
台所から新しいルマンドを引きずって戻ってきた端正は、号泣しながら走り去っていく馬謖とすれ違った。背後でぱん、と引き戸が力なく閉まる音を聞いた。
「……卿は何故あんなのを呼んだのだ」
「あぁ、癒されますなぁ。素直な部下」
白頭巾は羽扇で口元を隠し、くすくす笑う。
「卿はあれだな…本当に、士を見る目がない、というか…」
「私の場合、後ろから飛んでくる矢の方が、余程脅威でしたからね」
能力は普通でいいのです。背きさえしなければ…そう云って、思わせぶりに端正をちらりと見た。端正は持ってきたルマンドを乱暴に放り投げようとしたが、思い直して静かに置く。どうしても雑に振舞えない性質らしい。
「卿を崇拝するような輩は、凡才が多いということだな」
そう、嘲るような声で呟いた。
「腕の立つ部下も、いるにはいるんですけどねぇ…今度のは凄いですよ」
そう云って今度は、笛のようなものを咥えて思い切り吹いた。犬笛的な何かなのだろうか、俺には何も聞こえなかった。しかし、少しすると再び引き戸が乱暴に開かれ、今度はジャングルの奥地とかに居そうな浅黒い巨漢が、ぬっと顔を出した。
「―――ぅえ?」
端正の顔が不快に歪んだ。豪勢が腰を浮かす。
「なんか凄いの出てきたぞ!?」
「ご苦労である、孟獲」
孟獲と呼ばれた蛮族の王みたいな奴は、2〜3秒、白頭巾をじっと見つめたかと思ったら突如
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