ブルボン 再び 〜小さいおじさんシリーズ2
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ございますよ。では、私はこれにて」
ぱん、と軽快な音をたてて押入れの引き戸が閉じられた。何処に帰っていくのか気になる。
「……卿、目に余る嫌われっぷりなんだが、関羽殿に一体何をした」
白頭巾は、にこりと笑って羽扇をはたはた動かした。
「…あの方は、自分より後に入った出世頭は大体嫌ってますよ」
「当たり前だ!貴様、何だあの非礼っぷりは!余が肝を冷やしたわい」
豪勢が白頭巾を怒鳴りつけた。
「ははは…さて、関羽殿がだめならそうですね、彼、呼んでみますか」
羽扇を膝に置くと、白頭巾は再び手を打ち鳴らした。
「張飛、張飛、これへ」
「えっ……」
「ちょっ!貴様、待…」
バン!と乱暴に引き戸を押し開け、一陣の疾風が飛び出した。
「張飛殿、このルマンドを」「えぃいいいいぃああぁあああ!!!」
『張飛』と呼ばれた男は、白頭巾に迫るや否や、血走った目を眦が裂けんばかりに見開き、蛇矛を振り上げ打ちかかった。
「どっせえぇぇえええい!!!」
雷鳴の如き咆哮、そして風圧、舞い散る風塵。蛇矛は誤ることなく、白頭巾の真横の畳に突き刺さった。
「え……えぇええええ!?」
端正がびびる。当然だろう。訳の分からないとばっちりで真っ二つになるところだったのだから。
「ダメだこれ言葉通じんタイプだ、逃げろ」
豪勢が早くも席を蹴り飛び退る。さすが混迷の三国時代を生き延びた雄、決断早いわ。
「やれやれ、張飛殿もだめですか」
白頭巾が背後にすっと手を伸ばし、瓶のようなものを取り出す。張飛が一瞬、ひくひくと鼻を動かした。
「………酒!?」
「喋った!!」
「なんか喋ったぞこいつ!!」
喋ったことにびびる2人を尻目に、白頭巾は酒瓶を大きくふりかぶる。
「ごきげんよう、張飛殿」
そして引き戸の隙間に向かって大きくスローイング。張飛は目を血走らせ、酒瓶を追って走る。彼が引き戸の隙間に走りこんだ刹那、端正がダッシュで駆け寄りぴしゃりと引き戸を閉じた。
「……あっぶねぇ、死ぬとこだった」
そのこめかみから、大量の変な汗が流れ落ちた。…本当、なんでこの人たち、こんな厄介な白頭巾とつるんでいるのだろうか。
「――脊髄反射レベルで敵認定されてんじゃねぇか!何でルマンド切ってもらえると思った!?」
豪勢もだくだくと変な汗を全身から流している。白頭巾独りが、涼しい顔で羽扇を振っていた。
「ははは…もう全身全霊で嫌われちゃってましてねぇ…蜀も滅んだし、もう時効かと思ったんですけどねぇ」
「本能レベルで嫌ってるぞ、あの猛獣は」
「きっと張飛殿本人も、何で嫌いなのか分かってないのであろうな…」
俺にも、もういつから嫌いだったのか分からんよ…そう呟いて、端正は天を仰いだ。
「私だって嫌いですよ。あんな人たち」
白頭巾が、腹の底
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